田中太郎【そういえば今日、知り合いと鍋を囲んだんですよ】
セットン【偶然ですねー、わたしもですよ】
ヒロ【わ、すごい!わたしもです】
甘楽【ええっ!?お鍋?こんな時期にですか!?】
狂【あら、偶然ですわね!わたしたちも本日はしゃぶしゃぶを楽しませていただきましたの!】
参【美味しかった】
内緒モード 田中太郎【あの、】
内緒モード ヒロ【ん?】
内緒モード 田中太郎【全然変な意味とかじゃないんですけど、】
内緒モード 田中太郎【僕、少しびっくりしました】
内緒モード ヒロ【え、なにに?】
内緒モード 田中太郎【静雄さんって優しい方なんですね】
内緒モード 田中太郎【今まで見たことしかなかったんですけど、イメージと全然違う人だなって】
内緒モード ヒロ【あー、そっかそっか】
内緒モード ヒロ【贔屓目とかじゃなく、普段の静雄さんは割と穏やかだよ!】
内緒モード 田中太郎【何だか安心しました】
内緒モード ヒロ【そかそかwそう言ってもらえるとわたしも何か嬉しいw】
参【内緒】
田中太郎【?】
ヒロ【え、どうしたんですか??】
バキュラ【俺も友達の女の子と、2人きりでスキヤキを食いに行ったんですよ。ほら、知りませんか?1500円くらいで食べ放題になるスキヤキのお店】
田中太郎【あー、チェーン店でありますよね!】
ヒロ【スキヤキもいいですよねー、何かお腹いっぱいなのに食べたくなってきました】
罪歌【おなべ、せっとんさんとたべました。おいしかったです】
「え、」
思わずそんな声が漏れて、心臓がバクバクとうるさくなる。
罪歌さんが、セットンさんとお鍋を食べた?
「…どういうこと、だろう」
セットンは、つまりセルティで。
わたしもセルティと一緒にお鍋を食べていたわけで。
つまりこの罪歌って人は、あの時わたしと一緒にあの場にいた、誰かってこと?
「…………」
今までチャットで一緒になってもあまり触れないできたけれど、罪歌っていうのはこのチャットの利用者の名前でもあり、およそ2ヶ月前のあの出来事の、当事者の名前でもある。
そこに関連性はないということでここでは扱われているけど―…正直、わたしはまだ、あの出来事と“罪歌さん”の関連性について、消化できていないんだ。
「…誰なんだろう」
言葉遣いから察するに杏里ちゃんっぽいけど、正直彼女にチャットをするイメージはない。
それにあの子だって罪歌の被害者なんだ、そんなことがあるわけないよね。
「…美尋?」
「っあ、はいっ」
「どうした?風呂空いたぞ」
「あ、すいません、ありがとうございます」
…わたしったら、どれだけ真剣に考えてたんだろう。
静雄さんがお風呂から出てくる音にも気付かないくらいだなんてよっぽどだな、と、みんなに別れの言葉を告げることもなく携帯をテーブルに置いた。
「じゃあお風呂、いってきますね」
「ん」
そうだ、1人で考えたところで答えなんて出ないんだ。
だからって考えることが無駄というわけではないけれど、それで静雄さんに心配をかけたりするくらいなら、考えない方がよっぽどましだと思う。
「…でも、」
やっぱり、少しだけ気になる。
今度セルティに会った時にでも聞いてみようと頭の片隅で考えながら、わたしは服を脱ぎ捨てた。