内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【さっき言ってたやつだけどさ】

内緒ﾓｰﾄﾞ 田中太郎【？】

内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【静雄さんの彼女として有名、ってやつ】
内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【自分でも確認した】

内緒ﾓｰﾄﾞ 田中太郎【ああ、】
内緒ﾓｰﾄﾞ 田中太郎【どうでした？】

内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【びっくりしたよ】
内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【名前まで出てたから】

内緒ﾓｰﾄﾞ 田中太郎【大体の人は好奇心でしょうけど、気をつけて下さいね】

内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【うん、ありがと】



甘楽【もー！また太郎さんとヒロさんが内緒ﾓｰﾄﾞでいちゃいちゃしてるーっ！】

田中太郎【ちょっ、甘楽さん！】

ヒロ【してないですから】

甘楽【それにしては２人って仲が良いですよね〜？】

田中太郎【まあ、リアルで知り合いなので】

ヒロ【そういうことです】

バキュラ【あ、そうなんすか】

甘楽【やだ、ここで恋が生まれちゃったり！？】

田中太郎【何言ってるんですか！】

甘楽【ま、ヒロさんには彼氏がいますもんね〜】

ヒロ【かーんーらーさーん！】


――セットンさんが入室されました


セットン【ばんわー……】

田中太郎【あ、こんばんはー】

ヒロ【あ、セットンさん！】

セットン【私はもう駄目です】

甘楽【こんばんはー☆】

バキュラ【ばわっす】

田中太郎【って、どうしたんですか急に】

罪歌【こんばんは、よろしくおねがいします】

セットン【ちょっとお金を落としちゃいまして…】

バキュラ【！？】

ヒロ【え！】

田中太郎【それは大変ですね…交番には届けられたんですか？】

セットン【いや】
セットン【あ、すいません、届けました、届けてあります】

甘楽【へぇー。いくらぐらい落としたんですか？】

セットン【いえ、ちょっと今月の給料袋を丸ごと……】

罪歌【だいじょうぶですか】

バキュラ【！？】

ヒロ【お給料丸ごとって！やばいじゃないですか！】

田中太郎【本当に大変じゃないですか！大丈夫なんですか？】

セットン【いえ。貯金が割とあるので生活には困らないんですけど、凹んじゃって…】

甘楽【元気出して下さい！】
甘楽【そうそう、そんなセットンさんに朗報がありますよ！】

ヒロ【また変なこと言うんじゃないでしょうねー】

セットン【なんですか？】

甘楽【変なことなんかじゃないですよ！『ここ』のアドレスを見てください！】

田中太郎【あ、文章にリンク貼れるようになったんですね】

バキュラ【へー】


内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【ちょ、何これ！】
内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【何でセルティに懸賞金がかかってるんですか！】

内緒ﾓｰﾄﾞ 甘楽【さっき特番見てた？】

内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【池袋100日戦線ってやつですか？】

内緒ﾓｰﾄﾞ 甘楽【そうそう。それ見たどっかの芸能プロダクションが、正体を暴いた人間に賞金を出すって】

内緒ﾓｰﾄﾞ ヒロ【意味がわからない…】

内緒ﾓｰﾄﾞ 甘楽【黒バイクをタレントとしてデビューさせるつもりらしいよ】


セットン【いや、私にはこんなの無理ですよー。あの黒バイクを捕まえるなんて】

ヒロ【すいません、少しロムります】



どうしてこんなことになってるんだ。
眉間に皺を寄せながら、チャットのページを閉じ、急いでセルティのPDAにメールを送る。


【セルティ、今大丈夫？】

【うん、大丈夫だよ。どうしたの？】

【いきなりごめん、何かセルティに懸賞金がかかってるみたいで…セルティだから大丈夫だろうけど、一応言っておいた方が良いかと思って】

【…え、美尋ちゃん、それどこで知ったの？】

【たまに参加してるチャットだけど…】


どうしてそんなことを知りたいの、と一瞬だけ考えた。
けれどセルティだって寝耳に水だったんだろうし…あのURL教えてあげた方がいいかな。

なんて、考えていたら。


【あのさ美尋ちゃん、もしかしてそのチャット、甘楽とかって人いる？】

【え、セルティ、甘楽さんのこと知ってるの？】

【じゃあもしかして…ヒロって美尋ちゃんのこと？】

【じゃあセルティって、セットンさん？】


まさかこんなことがあるだなんて思いもしなかった。
だってあのチャットには臨也さんがいて…それだけでも驚いてたのに、帝人くんもいたんだ。
それに加えてセルティもいただなんて、もしかしてあのチャットはわたしの知ってる人だけで構成されているのでは…なんて有り得ないことを考えてしまう。

でもまあ、とりあえず。



ヒロ【ごめんなさい、今日はこれで落ちます】

セットン【あ、私もちょっと風呂入ってきますから、ここで一旦落ちます！】

田中太郎【あ、おやすみなさーい】

甘楽【おやすみなさーい☆】

セットン【おやすー】

ヒロ【また来ますね！】

罪歌【おやすみなさい、ありがとうございました】



これでもう大丈夫、セルティとのメールに集中出来る。
そう思いチャットのページを再び閉じれば、【ヒロさんが美尋ちゃんだったなんて驚いたよ】というメールを受信していた。


【わたしも。そういえば、さっきTV見てたけど大丈夫だった？】

【TVって？】

【池袋100日戦線ってやつなんだけど、セルティ映ってたよ】

【え！？あれ生放送だったの！？】

【うん、夕飯作らなきゃいけなかったから、途中までしか見てないけど】


生放送って知らなかったのか。
そう思いはしたけれど、今こうしてメールが出来ているということは、つまり何ともなかったのだろう。
…いや、懸賞金かけられてるって時点で十分おおごとなんだけどね。


【まさか声をかけられるとは思わなかったから驚いたよ】

【加えて懸賞金だし…セルティだから大丈夫だとは思うけど、これから気をつけてね！】

【うん、ありがとう。そういえば静雄は？】

【まだ帰ってないの。今日は遅くなるって言ってた】

【そっか。新羅もまだなんだ】

【ちょっと寂しいねえ】


本当、いつ帰ってくるんだろう。
彼の姿を思い浮かべながら日付を越えた時計を見れば、コチリと小さな音を立てた。

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