「よし、集まったな」


…さっきはあんなこと言ったけど、いざ始まるとなるとそれなりに気分は沈むもんだな。
温泉に入ってさっぱりしたはずの体にじわりとした汗がにじんだ気がして、何だか気持ちが悪い。


「それじゃあルールを説明するぞ。この道を進んでいくと、鳥居の奥に祠がある。その裏にテニスボールを入れた籠があるから、ボールと引きかえに紙を入れて戻れば終わりだ」


終わりだ、って簡単に言うけどね…わたしにとってそれがどれだけ怖いことかわかってないでしょ、わかってないでしょ跡部くん。
そう思いながら大きくため息を吐けば、ちょんちょんと幸村くんがわたしの肩に触れた。


「なに?」

「柳生頭痛いから寝てるって」

「え、大丈夫なの」

「あいつ偏頭痛持ちなんだよ。それで、立海は1人減るから谷岡さんは8番のやつと一緒」


ん、つまりそれって。
食堂を出てすぐに部屋に戻ったから岳人くんや宍戸くんが何番か聞きそびれちゃったけど、とりあえずは安心していいってことなのかな。


「柳生くんには悪いけど、助かった」


うん、肝試し終わったら真っ先に柳生くんにお礼を言いに行こう。


「出発してから戻ってくるまでのタイムを計る。上位3組には景品も出るから気を抜くなよ。それじゃあ1番の奴ら出てこい」


あ、柳くんと…氷帝の茶髪くんだ。
2人とも特に怖がってる感じはしないし、すぐ戻ってくるんだろうなあ。


「景品ってなんだろう」

「まあ高いもんではあるじゃろ」

「谷岡さんなに欲しい?」

「…お米かな、そろそろ買わないとなくなっちゃ、「それじゃあはじめるぜ。よーい…スタート!」


…………。
今日のわたし、よく話の腰を折られるなあ。
そんなことを思いながら歩いていく柳くんたちを見送れば、跡部くんが「残ってる奴らは順番に並んどけ」とか言った。


「やっぱ番号順なんか…」

「…わたしを置いて行っちゃうんだね」

「仕方ないじゃろ。ええ子にしとったらすぐ戻ってくるから」


そう言いながらまーくんは笑って、優しくわたしの頭を撫でた。
ゆっくりと離れていくその手が名残惜しいと思ったのは、たぶん今日が初めてだろう。



  


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