「…ん?」


飲み物とかとってくる。
そう言って4人からいったん離れたはいいけど、守ってくれる人のいない今氷帝の人に会ったらたまったもんじゃない…とみんなのもとへ急いでる時のことだった。


「……ぐう、」


…何か、寝てる。
自分の部屋からみんなの待つとこに戻る途中の木陰ですやすやと寝るその男の子は、氷帝のユニフォームを着てしっかりとラケットを握り締めていた。

…休憩にしてはまだ早いと思うし、コート向かう途中で寝ちゃったのかな。
だとしたらコートはもうちょっと先だし、起こしてあげた方が、いい気がする。…けど、


「…あのー」

「ぐー…」

「あの」


自主練しなくていいんですか。
相手が寝てるからか、そこまで緊張せずに話しかけられた自分に安心しつつも、どうしたもんかと首を傾げる。
自由行動にも関わらずちゃんとジャージ着てラケット持ってるってことは…うん、多分それだけテニスやりたかったってことだろうから、ちゃんと起こしてあげないといけな、


「…だれ?」

「わ、」

「……?」


突然目開けるもんだからびっくり、した。
けど起きてくれて良かった、この声の感じとか的に怖い人じゃなさそうだし、一安心。


「えと、立海の谷岡芽衣子 です。自主練 するんですよね」

「うううん…丸井くん…」

「…ブン太?」


ブン太のお友達なのかな。
そう思いながら「ブン太なら自主練行ったよ」と言えば、むにゃむにゃとしていた彼がその瞬間目をパチッと開いた。


「マジマジ!?丸井くんどこ!?」

「え、っと…どこかはわからないけど、コートとかじゃ ない、かな」

「君コートの場所わかる!?」

「わッ」


いきなりすごい勢いで、目を輝かせて、肩をつかまれた。怖くはないけど、ちょっとびっくり。
でもこんなこともあろうかと(うそ。本当は迷わないため)、幸村くんに頼んでもらってアーン?さんから余分な見取り図とか行程表もらっといてよかった。


「たぶん、わかる」

「マジ!?よかった、連れてって!」

「え、」


でもわたしみんなのところ戻らなきゃ、という間もなくわたしの手首を掴んだその男の子は、ずんずんずんずんどこかに向かって走っていく。
ちょ、場所わかってないんじゃ…っていうか速、いッ…!


「待っ…、コートこっちじゃない、さっきの角右…ッ!」

「あ、マジ?ごめん!」


やばい本当に足速い、いや多分わたしが極端に運動不足だったり遅いだけでテニス部の中ではこれが当たり前なんだろうけど…なんて必死に考えるわたしは、


「…あれ、谷岡さんじゃない?」

「ほんとじゃ」

「一緒にいるのは…芥川だな」

「と、止めなくていいのですか?」

「うーん、いいんじゃないかな。これも人見知り改善の第一歩だよ」


途中でわたしを見かけた彼らがそんなことを話しているなんて、知る由もない。



  


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -