「ほら芽衣子、起きんしゃい」
「う、…」
「ブンも赤也も起きとるし、芽衣子も早く起きんと化粧とかする時間なくなるぜよ」
まーくんの声が聞こえる。気がする。
けどわたしより先にまーくんが起きるだなんて有り得ないから…きっとこれは夢だ、そうだ。目覚ましの音も聞こえなかったしね。
「仕方ないな…ブン、赤也、入ってきんしゃい」
…ん?入ってきんしゃいってどういうことだろう。
そう思いながら夢の続きを待てば、
「先輩おはよーございまーす!」
「まだ寝てんのかよ芽衣子ー」
「うッ、!」
声がしたと思った瞬間体に乗った重みに、ついそんな声が出た。
ちょ、びっくりした…っていうか重い痛いッ。
「ほら赤也どきんしゃい、芽衣子が重いって言っとる」
「言ってなくね?」
「顔見ればわかるんじゃ」
「ういっす」
「な、なに…」
まーくんのおかげで重みが消えたのはいいけど…夢じゃなかったのか、これ。
そう思いながら顔をしかめれば、純粋な笑顔を浮かべて「おはようございます!」と言う切原くんと、彼とは対照的ににやにや笑うまーくんとブン太。
「なんで、いるの…」
「芽衣子が起きんから」
「だからって…」
寝起きの顔見られるとか最悪。
何でこんな日に限って爆睡してんのわたし、と思いながらシーツを顔まで覆えば、突然の動きに体が悲鳴を上げた。
「ッ…」
「先輩?」
「やば…筋肉つ、う…」
「は?」
筋肉痛?
不思議そうなブン太の声に「うん」と同意すれば、その瞬間沸き起こるクスクスと笑う声。
そうだ、昨日わたしめっちゃ頑張ったんだ。
慣れない作業に体を酷使したことを思い出しひとりうなだれれば、シーツが剥ぎ取られまぶしい光に襲われる。
「後でマッサージでもなんでもしちゃるけ、さっさと起きんしゃい。すっぴんで行くつもりないんじゃろ?」
「…うん」
「じゃあ俺ら向こう行っとるから、急いで準備しんしゃい」
「…はい」
…やっぱり、もう泊まりに来るの禁止にしようかな。
そう思いながら出て行く彼らを見送って、大きなあくびをひとつした。