「ということで、わたしもお手伝いすることになりましたのでよろしく」


明日からはGWという日の放課後。
HRも終わり、まーくんとブン太と3人で部室にやってきたわたしは、そう言って軽く頭を下げた。


「えッまじで先輩来てくれるんすか!」

「そういうことになった」


キラキラと目を輝かせる切原くんの言葉に同意すれば、「よっしゃ!」と言いながらブン太とハイタッチをした。
何でそんなに喜んでるんだろう。自分たちの負担が少なからず減るからかな。


「突然お願いしてしまってすみません」

「本当悪いな、面倒かけて」

「いやいや、柳生くんとジャッカルくんのような良心がいるから協力を決めたようなものだよ」


きっと全然役に立てないだろうに、そんなわたしを気にかけてくれるって本当に最後の良心だな。
そう思って薄く笑えば、後ろに立っていたまーくんがわたしの肩に腕を回して。


「嘘吐くんじゃなか。ペンションと温泉と飯に釣られただけじゃろ」

「え、なんでそれッ」

「この前おばさんと電話しとんの聞いた」

「このやろう…」


それは数日前、幸村くんたちに合宿参加の話を持ちかけられた日の夜のこと。
『GW中にフランス遊びに来る?来るならチケット送るよ』と言ってくれたお母さんに、合宿の件を話し断った時のことを思い返してみたけど…


「…部屋で電話してたはずなんだけど」

「故意じゃなか。ポケットに家の鍵入れっぱやったけ玄関に置きに行った時、ちょうど電話しとったの聞こえただけじゃ」

「……………」


そういうことかと合点がいったけど、盗み聞きとは感心しない。

っていうか、聞いてたにしても、柳生くんとジャッカルくんがいる前で言うことはないじゃないか。
2人のことを思えば合宿参加に対する思いが強くなるっていうのは、決して嘘じゃないのに。


「…とりあえず、うまくはできないだろうけど極力迷惑かけないようにするから、よろしく」

「ああ、よろしく頼むぞ谷岡」

「よろしくなー」


まーくんを恨めし気に睨むのをやめて言えば、腕を組んだ真田くんとブン太が言う。
………あれ、そういえば。


「幸村くん」

「なに?」

「わたしが来た目的って、なにか教えてもらうためじゃなかったっけ」


確かこの前そんなようなこと言ってた気がするんだけど。
そう思いながら幸村くんを見れば、「それじゃ蓮二以外はコート出て」と微笑みながら彼が言った。

わあ、すごい。幸村くんが言った途端にゾロゾロ外に出始めた。けど、


「ねえ柳くん」

「ん?」

「いいの?仲間外れにされてるよ」

「…馬鹿が」

「!?」


ば、馬鹿がって言われた。
まーくんとかブン太に言われるならまだしも柳くんに言われるとちょっと傷つくな、柳生くんとかジャッカルくんに言われたら本格的に立ち直れなくなりそう。


「この前精市が、教えることがあると言っていただろう」

「お、おう」

「教えるのは俺だ」

「ああ、なるほど」


だから柳くんはみんなと一緒に練習いかないんだ。
でも教えるって何をだろう…と考えるわたしに嫌な笑顔を浮かべた柳くんは、


「…今日は簡単なことだけを教えるつもりだったが、」

「?」

「部活の最後まで参加してもらうぞ」

「!!」


仕返しだなんて大人げないッ。
同い年ということも忘れてそんなことを思うわたしは、自分自身の愚かさに絶望した。



  


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