「そんじゃ写真も見たことだし、次は芽衣子の部屋捜索すっか!」
「やめて!」
今日は部活がない日だから、本当はまーくんが食事を作る当番。
とはいえこの人数じゃ大変…ということでみんなでファミレスに行ってきたわけなんだけど、帰ってきて早々に発したブン太の一言に、わたしは心からの拒否をした。
「ブン太もいいこと言うね。部屋ここでしょ?」
「いい加減にしろ幸村!」
「わ、初めて呼び捨てされちゃった」
これからは幸村って呼んでいいよ、なんて笑う幸村くんだけどまじで笑い事じゃない。
いや別に見られて困るもんなんてないけど、ッ!
「幸村、芽衣子がキレたら大変じゃけオススメせんよ」
「大変ってどうなるんすか?」
「しばらく口利いてもらえん」
切原くんの問いに答えながらリビングの方に向かったまーくん。
それに続いて歩いていった幸村くんは、天秤にかけた結果部屋を見ないことを選んだようだ。
わたしと話せなくなるのが嫌なのかな。なんて、自意識過剰だね。
「しかしあれだな、」
「ん?」
「これで溜まり場ができたな!」
みんなの後に続いてリビングに戻ると、家を出る前と同じ位置に座ったブン太が、嬉しそうに笑いながら言う。
…溜まり場って、
「勘弁して」
「なんでだよ、この年で家出てるやつなんてそうそういねーじゃん」
「そうっすよ、プチ家出とかにも最適っす!」
プチ家出って。
いたずらっこのように笑う切原くんだけど、経験でもあるのかな。
まあそういう気持ちになることがあるのは否定しないけど――…何でもかんでもうちを頼られるのは、という思いも少なからずあるわけで。
「…っていうか、まーくんもなんか言ってよ」
「…こうなるのは実家を出ることになった時からわかっとったなり」
「まじか」
女のわたしがいても容赦ないんだな、と思いながら笑顔のブン太と切原くんを眺める。
…でもまあ、転がり込んだと言っても過言じゃない身分のわたしが、あーだこーだ文句を言うのはお門違いな気もしないこともないし。
「…まあ、いいや。まーくんに任せる」
まーくんならみんなよりわたしの性格知ってるし、何らかの配慮はしてくれるだろう。
気分的に嫌な時は部屋にこもるか、最悪どっか行ってればいいし――…と失礼なことを考えながら、ため息まじりの息を吐いた。
「そうと決まれば、今度着替えとか持ってこないとね」
「居座る気満々じゃんッ!」
「ほ、程々にお邪魔させていただきますね」
恐ろしいくらいに良い笑顔だな幸村くん。
若干焦った様子ではあるけど、優しく言ってくれた柳生くんを見習ってほしい。
…でも、まあ。
「…悪くないかも、しれないなあ」
騒いだり睡眠を妨害しなければだけど。
そんなことを思いながら呟くも、数秒後には到底無理だと確信するに至った。