「のう、芽衣子」
「ん?」
「なんかあったんか?」
芽衣子と2人の夕飯時。
やけに上の空な芽衣子に言えば、「なんでもバレるね」と苦笑された。
「今日柳くんに話しかけられたんだけどさ」
「いつ?」
「5限の後の休み時間」
「ああ、ひなたぼっこするっちゅーて廊下行った時か」
「そうそう」
あん時のブンの「は?」って顔、傑作じゃったなー。
芽衣子のそんな気まぐれなんて俺には懐かしさを感じさせるだけじゃけど、やっぱ知り合ったばっかの奴らには不思議らしい。
「で、そん時どうした?」
「幸村くんとかブン太とかまーくんがわたしのこと面白いって言ってたっていうので、理由を確かめに来られてさ」
「…は?」
意味わからん。
俺は芽衣子のこと昔から知っとるから、ここ最近の「面白い」は、いとこだってバレないためのカモフラージュでしかなかった。
それに確かめるって言っても、理由なんて目で見てわかるもんじゃないだろーに。
「それについてはよくわかんないって言ったの。でもその後、変わってるってよく言われるって話してる時、きつい言い方したかも」
「なに言ったん」
「簡単に言うと、狭い物差しではかられたくないみたいな」
「あー…」
なるほど、芽衣子の持論が展開したわけか。
別にこいつの話し方は人に強制させるようなアレはないし、そんな気にしなくてもええと思うんじゃけどな。
「柳くんの言葉が不愉快とは言ってないけど、やっぱり変わってるって言われた時に無言でいたら、気を悪くするなとは言われちゃったし」
「なるほどな」
聞けば聞くほど、柳が気にしそうもない内容で悩んでることがわかった。
でもまあ芽衣子は柳と知り合ってまだ日が浅いし、なんて考えてたら、俯きがちに「ごめん」と謝られた。
「どうしたん?」
「…柳くん、まーくんの友達なのに」
「謝らんでええよ。心配せんでも柳はそんなん気にする奴じゃなか」
むしろ興味持ったんじゃないか。
そう付け加えれば、「確かにそういうことは言ってたけど、」と不安そうに言った芽衣子が顔を上げる。
「安心しんしゃい、あいつは絶対、なんも気にしとらんから」
「…ほんと?」
「まーくんが芽衣子に嘘吐いたことあったか?」
「数え切れないくらい吐かれたよ」
「ならこれは数少ないほんと」
信じんしゃい。
そんな思いを込めて小さく笑えば、芽衣子も安心したように笑顔を見せる。
「でも一応、今度謝る」
「ん」
「ありがとまーくん」
「どーいたしまして」
相変わらず妙なとこで真面目な奴じゃ。
はにかむ芽衣子を見ながら思ったが、こういう時ばっかりちゃんと話を聞いてやる俺も大概だと自嘲した。