「びっくりした」
「ん?」
「似てるって言われて」
「あー」
どうやら柳くんは、頭がいいだけじゃなくなかなかに鋭い人らしい。
学校を出てすぐにため息を吐いたわたしは、そんなことを考えながら口を開いた。
「似てないと思うんだけど」
「そりゃ自分じゃ思わないじゃろ」
「まーくんは似てると思ってんの?」
「思っとるわけなか」
うん、普通にそうだよな。
あ、でも小さい頃は会うたび大人たちに「いとこなのにほんとよく似てる」って言われてた気がする。
…いやいや、そんなことよりさっ。
「話変わるけどご飯なにがいい?」
「肉」
「この前も言ったけど食材で言うな」
呆れながらも笑って言えば、まーくんは「肉が好きなんじゃ」と唇を尖らせた。かわいい。けど、ね。
「野菜も食べなきゃだよ」
「でも俺今日頑張ったし」
「なにを?」
「部活と、……あ、柳のこと教えた」
きっと、部活が終わったことを知らせてきたメールの、【柳おるよ】という部分についてのことを言っているのだろう。
…いや、なんかもう頑張ったことじゃなくて褒めて欲しいことになってるよね。
「…あ、そうだ」
「ん?」
「屋上でブレザー貸してくれた。だから今日はお肉メインね」
「おおおおお」
ご褒美というとちょっと違う気がするから、お礼ってことでね。
笑いながら言えば、まーくんも嬉しそうにわたしの頭を撫でる。どんだけ肉が食べたかったのだろう。
「ただし、ちゃんと野菜も食べること」
「えー」
「嫌いなわけじゃないんだから食べられるでしょ?」
「…芽衣子は嫌いじゃ」
「……今日の夕飯は野菜尽くしに、」
「すまんすまん、嘘。今の嘘じゃ」
両手を合わせて言ったまーくんに、思わず笑いがこぼれてしまう。
うん、でもこれなら肉も野菜も食べさせられるね。
「じゃあスーパー着く前にメニュー決めよ」
「カレー」
「え」
「カレーがええ」
「まさかの肉メインじゃないだと」
わたしの言葉に悪戯っ子のように笑ったまーくんは、「カレー食いたい」と念を押すように言う。
3回も言うとかどんだけカレー食べたいの、とわたしが笑えば、まーくんも笑った。