「つまりこの言葉の意味は――…」
つまんない、本当につまんない。
教科書をめくる音とハマダという先生の声だけが響く教室で、わたしは大きなあくびをした。
「(…ブン太寝てるし)」
ご飯食べたら眠くなるとか子供か、三大欲求に従順すぎるだろ。
そんなことを思いながら退屈しのぎに携帯を取り出せば、ちょうどメールが来たタイミングらしく、受信を知らせるランプがピカピカと光った。
【ひまじゃー】
メールの送り主である左斜め前に視線を向けたけれど、彼はだるそうに突っ伏しておりこちらを向く気配はない。
さて、なんて返そうか。
【わたしも暇】
【授業抜けたいなり】
【サボり魔め】
【芽衣子もじゃろ】
確かにそうだ。
的確過ぎる言葉にぐうの音も出ないわたしは、話を逸らすべくしばし考える。
【まーくんが部活の間だけど、わたし校内探検してるね】
【部活見とればええのに】
【この時期でも夕方は寒いからやだ】
【わがままじゃのー】
仕方ないじゃん、なんて思いながらどう返そうか迷っていると、視界の隅でまーくんが動く気配がした。
…べーじゃないし。子供か。
【適当に校内探検してる】
【迷子になるかもしれんよ?】
【学校の中なら見つけてくれるでしょ】
【探すのめんどい】
【夜ご飯食べられなくていいなら探さなくて良い】
【芽衣子ちゃんは甘えん坊じゃ】
甘えん坊じゃないし。
眉間に皺が寄るのを感じながら携帯をしまえば、あからさまにつまんなそうな顔をしたまーくんがこっちを見ていた。