「そういえば、どうして忍足さんたちまで一緒にカフェ入ってきたんですか」

「歩いとる間、謙也が暑い暑いってずっとうるさかったからな」

「うるさかったって何やねん!事実暑かったやろ!」

「暑いっちゅーか暑苦しいねん。お前が暑い暑いうるさいから」

「暑苦しくないわ!」


……か、関西人って、何か迫力あるな。
そう思いながら2人のやりとりを見ていると、謙也くんと目が合った。


「あ、そや。すっかり忘れとったけど、俺忍足謙也っちゅーねん」

「え、あ、…えっと。谷岡芽衣子 です」

「さっきもこいつが言ったように、俺は侑士のいとこやねんけど…侑士から聞いてたん?」

「うん、えっと…忍足くんと、あとまーくんから」

「…まーくん?」


言いながら、謙也くんは私の目の前にいる男に視線を向けた。


「あー、仁王か。自分彼女さん?」

「彼女やったら日吉とデートしとるんマズいやろ」

「あ、せやな」


…謙也くんってあれかな。もしかして、ちょっと天然だったりするのだろうか。
そのせいかはわからないけど、何か知り合ったばかりの頃の忍足くんよりは親しみやすそう。
……なんて忍足くんには申し訳ないけど、今となってはあの頃の警戒心や苦手意識のようなものはなくなったから許してもらいたい。

そう謙也くんについて分析していると、私の思考を占拠していた彼が私をじっと眺めていた。


「せやったら、仁王とはどういう関係なん?」

「いとこだよ」

「へー、そうなん!」


私とまーくんの顔を見比べ、物珍しそうに言った謙也くん。
多分あれだろうな、似てるだとか似てないだとか、そういうこと考えてるんだろう。


「でも前に聞いたけど、謙也くんって大阪に住んでるんじゃないの?」

「実家の跡継ぐのに東京の大学行こうと思ってな。第一志望の大学改めて見学したついでに観光してたっちゅー感じや」

「おや、東京の大学ですか」

「今のところはそのつもりやな」

「でもオープンキャンパスにしては早いですよね」

「夏休み中って普段よりも新幹線代高なるやん?それに、オープンキャンパスより個人的に行った方がサクッと終わらせられるしな」


笑いながら言う謙也くんは楽しそうで、何だか微笑ましくなってしまう。
私は地元からこっち出てくる時、気持ちの半分以上を憂鬱が占めていたけど…他校生とはいえ知り合いがたくさんいるとやっぱ楽しみなんだろうなあ。謙也くんってボジティブそうだし。


「っちゅーわけでや。これからよろしくな、芽衣子ちゃん」

「うん、よろしく。仲良くしてね」

「……よろしくも仲良くもせんでいいっちゃ」


久々に聞こえてきた声に自分の正面を見れば、ふてくされたように唇を尖らせるまーくん。
…合宿のことしかり、つい数分前のことしかり。この人は理解してないのだろうか、色々と。


「…仁王って、束縛激しいんやなあ」

「いとこで束縛っちゅーのもおかしいやろ」

「いや、なんていうか…お気に入りをとられるのが嫌、的なアレ兼過保護なだから。ごめん、気にしないで」

「ええよええよ、むしろおもろいもん見れてよかったわ」


カラカラと笑いながら言う謙也くんに、相変わらず不満そうなまーくん。
本当仕方ない人だな、と思いながらも悪い気がしなかったのは、どうしてかわからない。



  


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