「おー芽衣子。おはよ」
「お前さんまたサボっとったんか?」
「うん」
1限も終わり教室に入れば、待ってましたとばかりに2人が声をかけてきた。
そうして挨拶もそこそこにまーくんを見れば、……うん、やっぱり。
「ま…仁王、それ指定じゃないよね」
「なんじゃいきなり」
いきなりカーデを指差して言ったわたし。
不思議そうな顔をしたブン太と仁王は、わたしを見てぽかんとしてる。
「指定じゃないよね?」
「違うけど、どうしたん」
風紀委員に怒られた。
ガタンと音を立てて椅子に座りおよそ1時間前の出来事を説明すれば、仁王とブン太が「ああ」と呟く。
「南門使ったからじゃろ」
「南門?」
「高等部に一番近い校門だよ」
彼らいわく、立海には方角ごとに4つの門があるらしい。
話を聞くに、なにも知らずに登校してきたわたしはまんまと風紀委員に引っかかったようだ。
「今週いっぱいは風紀検査あるけ、南門使わん方がええよ」
「わかった」
そこ以外は風紀委員いねーしな、とブン太が付け足した。
なるほど、さしずめ風紀強化週間といったところか。
「だから2人はそのままなんだ」
「なにが?」
「髪の毛。見つかったら言われそう」
派手な髪を指差して言えば、ああ、と再び2人が声を上げた。
「見つかったらうるさいからのう」
「芽衣子も気をつけろよ、茶髪だし」
「これ地毛なんだよね」
「まじか」
わたしの髪を一束とって、へえ、とブン太が呟く。
え、いや、嘘なんだけど。髪触られるとかまーくん以外にされたことないし、なんだかちょっと、恥ずかしい。
「そうだ、連絡先教えろよ」
「唐突だね」
「友達なんだしいいだろー」
風紀検査の日も教えやれるしな、と言ってブン太はポケットから携帯を取り出す。
突然なんだと思ったけど、なるほど、そういうことならありがたい。
いや、そういうことじゃなくても全然教えるけど。
「…あ、」
「どうした?」
「幸村くん、」
取り出した携帯を開けば、見慣れないアドレスに、まだ見慣れない名前。
そういえば寝る前にアドレスがどうとかって話をしたような気がする。
「え、なんで幸村?」
「さっき屋上でしゃべった」
「ほお…なるほどなあ」
新着メールを開いてれば、【かわいい寝顔をありがとう( ^ω^ )】という文章に、添付されている1枚の写メ。
…くそ、やられた。
「なーなー、早くアドレスー」
「あ、ああ。うん」
2人に怪しまれる前に、さっさと教えてしまおう。
寝顔なんて撮りやがって、と内心悪態をつきながら、幸村くんからのメールを削除した。