「たわけがッ!!!!!!」


おはようございます。まーくんと一緒に途中で学校を出て、部活をサボった次の日の朝です。

まあ、怒られることは予想してたよ。
けど恐る恐る部室のドアを開けた途端に柳くんに引っ張られて、正座を強いられた状態でお説教を受けるとは流石に思ってなかった。ああ、足が痛い。


「お前たちは一体どういう神経をしているんだ!学校を途中で抜け出すにとどまらず、無断で部活を休むとは言語道断!たるんどるッ!」


そういえば、真田くんに怒られるのは初めてだ。
事情があったとはいえ今回は完全にわたしたちが悪いから、甘んじて、全力で受け止めるけど…真田くんって怒る時いっつも声大きいよね。そんなに怒鳴らなくても聞こえるのに、性格かな。


「特に仁王!聞くところによるとお前が谷岡を連れ出したそうではないか!」

「ふぁあ……そう じゃのう、」

「人が話をしている最中にあくびとは何事だ!!」

「いッ…!」


ゴツン。まーくんの頭に真田くんの拳骨が落ちた。

あああああ、痛そう。そして暴力反対。…とはいえ今のは流石にまーくんが悪いし、わたしもかばいきれない。生理現象とは言えどね。


「ふふ、もういいじゃないか真田。2人も反省してるよ」

「し、しかしだな幸村…」

「大丈夫。昨日俺たちが話を聞いて、ちゃんと納得したんだから。ね、蓮二」

「ああ。この辺で勘弁してやろう」

「お前たちがそう言うなら……」

「よし、じゃあ説教はもう終わり」


不完全燃焼っぽい真田くんを押しやり、幸村がパンと手を叩く。
ああよかった、これでもう正座からも解ほ、「それじゃ2人はこれから一週間、部室の掃除頼むよ」


「………は?」

「…幸村、今なんて言ったんじゃ」

「だから、一週間部室の掃除」


………え、ちょっと待って。


「幸村昨日怒ってないって言ったッ」

「怒りたいくらいだって言っただけで、怒ってないなんて言ってないよ」

「でもそこまで人でなしじゃないって」

「ああ、それとこれとは別。事実お前らは学校を抜け出して、部活に勤しむこともなく海で遊んでたわけだろ?それに、罰を与えないなんて言ってないよ」


それじゃ、よろしくね。
ものすごい笑顔の幸村に気圧されたわたしたちは、もうなにひとつ、言葉をつむぐことなんてできなかった。










「おい谷岡、大丈夫か?」

「…ん?」


それは、ブン太とまーくん、そしてジャッカルくんと柳生くんにわたしを加えた5人で、部室から昇降口に向かって歩いている時だった。
突然声をかけてきたジャッカルくんは、心配そうに眉尻を下げる。


「大丈夫って、なにが?」

「あー…なんて言ったらいいのかわかんないけどよ。お前らが来る前に聞いたんだ、話」

「…ああ、うん、いいよ。みんなに話していいって昨日幸村に言ったから」

「そっか」


でもごめんな。
困ったように笑ったジャッカルくんは、申し訳なさそうに言った。


「もう色々と吹っ切れたから、大丈夫」

「…え、でも解決したわけじゃないんだろ?」

「うん、してないよ。でもみんなと距離置こうとしても嫌がらせされるんだったら、距離置く意味ないなって思って」


だったらいっそのこと、いつも通りに接してやろうじゃないか。
そんなの火に油を注ぐだけって言われるかもしれない。でもわたしだって、みんなのことが好きなんだ。
こっちは被害者なのに、どうしてわたしが気を遣ってみんなとの距離を置かなきゃいけないのか、考えてる間に意味がわかんなくなってきた。


「…お前、なんていうか強いよな」

「何が?」

「いや、俺もよくわかんねえけど」


わたしの何が強いのかよくわからないけど、言った本人のジャッカルくんもわからないと言うのだからどうしようもない。これ以上聞くのはやめよう。

そう思っているうちに下駄箱が見えてきて、ああは言ったものの、少しだけ体が強張った。


「大丈夫だ谷岡、心配すんな」

「…?」

「お前には俺たちがついてんだから、あんまひとりで抱え込むなよ」


そう言って軽くわたしの肩を叩いたジャッカルくん。
その言葉に、わたしの味方はまーくんだけじゃないのだと、何だかすごく安心した。



  


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