誰か助けてください。
お願いします、本当に助けてください。
わたしたちは、まだ死にたくないのです。
「やあ、おかえり」
今日はまーくんがご飯を作ってくれるらしいので、とりあえず家着いたら着替えて、それから材料買いに行こうか、なんて話しながら帰ってきたら家の前になんか見慣れた人が2人いた。しかも体育座りしてた。
あれ、これわたしたち死ぬんじゃないかな。殺されたりしないかな。
ゆっくりと立ち上がった魔王にびくりと肩を震わせてまーくんの後ろに隠れれば、もう1人がゆっくりと近づいてきた。
「ずいぶんと遅かったな」
「……やな、「なぜここにいる、とお前は聞く」
「……………」
「なぜかは自分の胸に聞いてみればわかるんじゃないか?」
「………すんません」
あ、まーくん負けた。
普段まず見ることのない彼の笑顔に気圧されたらしい、けどめげないで、この人は中ボスだよ。本当のボスはその後ろにいるよ。
「どういうことか説明してくれるよね、仁王」
ボスの言葉にわたしを一瞥したまーくんの顔を見れば、迷ってることなんて一目瞭然だった。
まーくんがあんなことをしたのは、わたしのため。
それを思えばどうってことなんてなくて、
「…いいよ、まーくん」
「……ほんとにええんか?」
「うん、大丈夫」
わたしみんなのこと好きで、信じてるから。
小さな声でそう呟けば、2人のボスが顔を見合わせた。
「へえ、今夜は鍋かあ。楽しみだね、蓮二」
「ああ、そうだな」
やばい、この人たち夜ご飯食べて行くつもりだ。
しかもなんだよ鍋って、今日の夕飯はスーパー着いてから決めるつもりだったんだけど。自分が食べたいだけじゃん。
「俺お腹減っちゃったなあ」
「…すぐ材料買ってきます」
「うん、頼むよ」
「芽衣子、俺も、「仁王、イップス」
…イップス?
お財布を握り締めたわたしに気付いてまーくんが口を開いた瞬間、幸村がなんか言った。なにイップスって、まーくんなんで突然静かになったの。
「芽衣子ひとりじゃ大変だろうし、蓮二も一緒に行ってあげて。尋問は俺がやっておくから」
「ああ」
わかった、と言った柳くんが立ち上がってわたしを一瞥する。
……やばいなあ、尋問って。まーくん大丈夫かな。
「ほら谷岡、行くぞ」
「……はい」
頑張って、まーくん。
言葉にしないままエールを送れば、行かんで、というまーくんの声が聞こえた気がした。