ヴーッ、ヴーッ


「…あ、LINEだ」


ここ最近…というか、合宿以来、LINEがくることが格段に増えた。
いや、まず立海に転校してきてからだいぶ増えたんだけど、合宿が終わって以降ますます増えた。
今回は…あ、ジローくん。後でブン太のこと隠し撮りして写メ送ってあげよう。


「なんじゃ芽衣子、さっきから携帯ばっか見よって」

「え、今見たばっかなんだけど」

「ふん。顔にやけとるぜよ」


ひつじのスタンプかわいいなあ、なんて考えてたら頬が緩んでいたらしい。
私の机に肘をつきながらほっぺをつつく指を掴んでやれば、不満げだった顔が笑顔に変わる。


「LINE?」

「うん、今のはジローくんから」

「さっきも携帯鳴っとったじゃろ」

「それは柳くんから」

「…参謀?」

「私が読みたいと思ってた本持ってるみたいで、今度借りることにしたの」


自分があまり活字の本を読まないせいか、無関心らしいまーくん。
家いる時も、たまに静かだと思うと漫画読んでるしね。


「芽衣子は柳と仲良えのう」

「お父さんだから仕方ないよ。っていうかこのスタンプかわいくない?」

「…ひつじ?」

「うん。いっつも寝てるジローくんっぽいよね」


ふわふわしてるひつじの毛って、ジローくんの髪みたいだし。ジローくん、LINEの時必ずひつじつけるんだよ。
そう言って笑う私なんかお構いなしのまーくんは、少し拗ねたように目を逸らす。


「なんで拗ねんの、ま……仁王だって、いつもひよこのスタンプとか絵文字つけててかわいいじゃん」

「え、気付いとった?」

「そりゃ気付くよ」


彼とのLINEを開き、ここ最近のやりとりを確認する。
うん、やっぱり。昨日のも3日前のも、過去に送られてきたLINEにはほとんどひよこのスタンプや絵文字がついてる。

ちなみにまーくんは、絵文字だけじゃなく顔文字もよく使う。
褒めほしい時には『(`ω´)』って感じで、『(´8`)』はいじけてる時にね。


「仁王のメールかわいくて好き」

「えっ」

「ほわってする」

「ほわ?」

「うん、ほわ」


これも多分ギャップ萌えなんだろうな。
こんな見た目で昔から感情表現する顔文字使うし、今どんな気持ちなのかってのがかわいく表されててなんか和む、「お前らなにしてんの?」


「あ、ブン太おかえり」

「重いんじゃけど」


私の携帯を覗き込んでいたまーくんの背中に、ブン太が乗りかかった。
口のすぐ横にクリームついてる。どっかでお菓子をもらったらしい。


「あ、そうだ。2人とも動かないでね」

「は?」


パシャッ


「…え、なんじゃ。写メ?」

「うん。ジローくんへの返事に添付する」


大きな画面を触って、撮ったばかりの画像を送る。ふふ、ブン太うつってるし、ジローくん喜ぶだろうな。
…よし、送れた。


「ジロくんからメール来てたのか」

「うん、跡部くんがすごい美味しいお菓子くれたんだって」

「氷帝はいいよなー、幸村もくれりゃいいのに」

「幸村はブンがお菓子食うの反対派じゃから有り得ん」

「だよな…」

「あ、返事来た」


早いなジローくん。そう思って携帯に視線を落とすと【丸井くんだー!】という一言のみ。
…あ、画像ついてる。


「ん、宍戸くんとがっくんだ」

「写メ来たんか」

「うん、3人で写ってる」


ほら、と2人に携帯を見せれば、仁王とブン太が顔を見合わせて笑う。
え、なに。


「ほら芽衣子っ」

「俺らも一緒に撮るぜよ」

「えっ、ちょッ」


ぐいっと引っ張られたかと思えば、携帯から無機質な音が聞こえた。
えええ急に…変な顔になってないかな。


「もう、いきなり撮らないでよ」

「俺らにやっといてよう言えるのう」

「あんたたちは自分の顔に自信あるんでしょ。だからいいの」

「気にすんなって、お前別にかわいいんだから」

「え、」


サラリと言ったブン太は、ガムをふくらませながらわたしに携帯を渡す。
…………別に変な顔になってなくてよかった、けど。


「ちょ、今ときめいた」

「俺に?俺に?」

「う、ん。ブン太、すごい普通に、言うから」


かわいいとかまーくんもよく言ってくるけど、たいていはふざけてだし。…だから、ちょっとどきどきしてる。
どうしよ、顔赤くなってないと良いんだけど。


「お前かわいいなー」

「う、うるさいブン太の馬鹿」

「芽衣子照れとる」

「あんたたちうるさいッ」


ちょっと恥ずかしいけど、せっかくだからとジローくんのLINEに添付する。
氷帝の3人も、さっきの私たちと同じような感じで写メ撮ったのかな。宍戸くんちょっとびっくりしたような顔してたし。


「芽衣子はかわええのう」

「…もうときめいたりしないから」

「なんで」

「ブン太はいきなり言ってきたから」

「俺にもときめいて」


おそらくまだ赤みを残しているであろう私のほっぺをつつくまーくん。
悪いけど、そんなことされたからってきゅんと来たりしませんよ。合宿の時はこれでもかってくらい抱きつかれたし。


「芽衣子、それ俺にも送ってー」

「ん」

「あ、俺も」

「わかった」

「来た来た。俺これ待ち受けにしよ」


うつむいて携帯を操作したブン太は、ニッと笑って携帯の画面を見せる。わ、まーくんまで待ち受けにしたのか。
……変な顔になったりもしてないし、私もそうしようかな。


「芽衣子もしんしゃい」

「…うん、今した」

「俺らおそろいじゃん」

「おそろっぴだね」


そういえば、氷帝の人と写メ撮ったりはしてたけど、立海の人と撮ったのは初めてかもしれない。
……こうやって目に見えて友達って思えるのは、少しむずがゆいけどなんだか嬉しい。


「これ他の奴にも送っちゃろ」

「他の奴って?」

「幸村とか赤也とか」

「…うるさくなりそう」

「それが狙いじゃ」

「じゃあ俺赤也に送るから仁王は幸村に送って」

「ん」


俺らの仲良しっぷりをアピールじゃ、なんてのんきに言ってるけど、次会う時のことを思うと少し憂鬱だ。
そう小さくため息を吐きながらも、再び見た自分の待ち受けに頬がゆるんだ。



  


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