「…………」


目が覚めました。
おはようございます、合同合宿最終日の朝です。


「…ひどいな、」


重い瞼に眉をひそめながら周りを見れば、なんていうか、すごいたくさん人がいた。

まず隣のベッドに幸村でしょ。その向こうに柳くんが寝てて、一番端っこは忍足くんがいる。
床では切原くんとがっくんが寝転がってて、切原くんのお腹の上にはブン太の足が乗っかってる。寝相わるいなあいつ、可哀相に切原くん。

っていうか。あれ、ここわたしの部屋のはずなんだけどな。


「……あ、芽衣子」

「あ、幸村」

「おはよう」

「おはよ」


目をこすりながら体を起こした幸村が「なんかいっぱいいるね」とか呟いたけど、ここは君の部屋でもないんだよ。

わたし一番最初にベッドもぐって、「いるのはいいけど騒がないでね」っていうのを最後に寝ちゃった気付かなかったけど、みんな帰らなかったんだね。静かじゃなかっただろうによく寝られたなわたし。


「…ん?」


っていうか、なんかシャワーの音するんだけど。
そう思いながら洗面所の方に目を向ければ、わたしたちの声に目が覚めたのか、柳くんと忍足くんも体を起こした。


「おはよー」

「ああ、おはよう」

「…うわ、岳人も宍戸も床で寝とるやん」

「わたしもびっくりした」

「寝心地悪そうだよね」

「そりゃ俺らと比べたら悪いやろ」

「枕だけはきちんと持ってくるとは、用意周到だな」


3人とも言いたい放題だな、きっとベッド取り合いだっただろうに。
そう思っていると洗面所の方からガチャリと音がして、


「なんじゃ、お前ら起きたんか」


まーくんが顔を覗かせた。
…みんないる状況でまーくんが部屋に帰るとは思えないから予想通りではあるけど、人の部屋でシャワー浴びるかね普通。


「おはよまーくん、早起きだね」

「じゃろ。ほめて」

「…えらい」

「ありがとさん。あ、パンツとって」

「…え、シャワー浴びるのに持ってかなかったの」

「忘れた」

「部屋にあるの?」

「ん、ベッドの下にあるなり」


ベッドってどこのだよ。
もう嫁やん、という忍足くんの声を聞きながら立ち上がれば、すぐ足元に広がる黒い布を発見。
…………。


「…はい」

「ありがと」

「なんであそこにあるんですか」

「夜枕取り行った時ついでに持ってきて置いといた」


ん?
どういうことだろう、と少し離れたベッドを見れば、並んだ2つの枕。わたしのベッドにもぐってきたのか。


「…まあいいや。ちゃんと髪の毛乾かしなよ」

「ん。今何時?」

「柳くん、何時?」

「7時半だ」


7時半。
…え、もうすぐ朝ご飯じゃんッ。それに今日は最終日だから、色々と荷物の整理しなきゃだしッ。


「ちょっ、ブン太切原くんがっくん宍戸くん、もうあと30分でご飯だよ。もう起きて」

「あー…」

「…っていうかあんたは足どうにかしなよっ」


唸るブン太の足を切原くんのお腹から退け、4人の肩を揺らしながら声をかける。
っていうか誰か手伝ってよ。


「岳人、宍戸、もうすぐ朝飯やで」

「赤也も起きろ」

「ブン太、殴るよ」


…いや、手伝ってって思ったタイミングでみんなベッドから降りてきてくれたのはいいけど、物騒だな幸村。
まあいいや、実際やったりしないだろうし。


「ちょっと4人お願い、わたし顔洗ったり日焼け止め塗ったりしたいから」

「ああ、任せろ」


柳くんの言葉に洗面所に向かおうとしたところで、ちょうどまーくんが出てきた。
…ちょっとあんたッ。


「ズボンだけじゃなくて上も着なさいっていつも言ってるでしょッ」

「えー」

「なんで着ないの」

「あつい」

「……………」


スエットの下だけを履いて出てきたまーくんに言えば、しれっとした顔で返された。


「幸村、服装の乱れは心の乱れってことでまーくん怒っといて」

「うん、わかった」

「す、すぐ着るけ」


よし、これでオッケー。
いそいそとスエットの上を着始めたまーくんを見て、わたしは洗面所に入った。



  


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