「自分らほんまに仲良えんやな」
「あ、忍足じゃ」
「忍足くんじゃ」
っていうか、まーくんも柳生くんもウィッグつけたりして頭蒸れて熱くなってるんじゃないのか。
そう思いながらまーくんの髪に触れた時やってきた忍足くんは、私たちを見て楽しそうに笑った。
「…今、仁王の真似したんか?」
「うん。似てた?」
「いや、びっくりするほどこれっぽっちも似てへん」
「でもかわいかったきええよ」
「別にかわいくなかったと思うけど」
「真似自体がかわいい」
まーくんの言うことは相変わらずよくわからない。
けどたぶん何を言っても無駄なんだろう。それだけはよくわかってるから、私は何も言わない。
「ほんまにいとこなん?」
「ちゃんと血繋がってるよ」
「それ知らんとカップルみたいに見えるで」
カップル。
まあ確かに異性の身内にしては仲良い方だとは思うけど、同じ親の子供なわけじゃないし、いとこなんて限りなく他人に近い血縁関係者だ。
「俺もいとこおるけど、たまに会ったかてここまで一緒にはおらんで」
「謙也?」
「謙也」
けんや、けんや。
私の知らない名前に首を傾げれば、まーくんが携帯を取り出しながら言う。
「忍足にもテニスやっとるいとこおって、合宿とかでも一緒になったことあるんじゃ」
「へえ、そうなんだ」
「ん、この金髪。こいつは大阪に住んどるんじゃって」
まーくんの携帯を覗き込み、彼が指さした人物を眺める。
へえ、これが忍足くんのいとこ。
「忍足くんとは似てないね」
「いや、まあいとこやし…てか自分らが特別似とるだけやで。同性でもあるまいし、何でそない似とるんや」
写メにうつった金髪の男の子と忍足くんを見比べて言えば、さも当然だと言いたげな顔で言われた。
何でそんなにって言われても、
「似てないと思うけど。ね、」
「ん、似とらん」
「いや十分似と…ああ日吉に岳人、ちょうどええとこ来たわ」
「あ?なに侑士」
「どうかしたんですか」
私たちの後ろを通り過ぎようとしていたがっくんと日吉くんを捕まえ、忍足くんが手招きする。
そして私たちを指さしたかと思えば、
「芽衣子ちゃんと仁王、似とるよな?」
「あー、言われてみれば確かにな。まあ似てんじゃねーの?」
「……そういえば不思議ですね。兄妹でもあるまいし」
「侑士と謙也は似てないのになー」
「いや、やからそれが普通なんやって」
柳くんのみならず忍足くんまでそんなことを言ってきたと思ったら、がっくんと日吉くんもか。
そう思ってまーくんと顔を見合わせたけど、見れば見るほどに似てない。
「…何でここであっちの忍足さんが出てくるんですか?」
「いとこつながりじゃん」
「いとこつながり…?」
「え、何日吉、お前こいつらがいとこだって知んなかったのかよ」
がっくんの言葉に目を丸くした日吉くんは、どうやら私たちが身内であることを知らなかったようだ。
考えてみれば確かに日吉くんには話してなかったけど、そういう情報って友達とか先輩後輩間で普通にされてるもんだと思ってた。
立海だったら絶対そういう話ってほかの人にするだろうけど、氷帝は違うのだろうか。
「色の白さもそうですが、口元と目元が特に似てますね」
「…私まーくんほど死んだ目してないよ」
「芽衣子ちゃんも大概死んだ目しとるで」
「え、うそでしょ」
「ほんまに」
「まさに女版仁王って感じだよなー」
…だとすれば、私もまーくんみたいに…とは言わないまでも、もうちょっと身長欲しかったんだけどな。似なくていいところばっかり似やがって。
そう思いながらため息を吐けば、「マジで似てる」とがっくんが顔を近づけてきた。近い。
「向日、それ以上芽衣子に顔寄せたらチューするぜよ」
「え、芽衣子が?」
「なわけないじゃろ、俺じゃ」
誰得だよそれ。
至近距離で私を眺めていたがっくんが後ずさりするのを見て、まーくんは満足げに眼鏡のブリッジを上げた。