10


 ハグリッドの背中を追ってハリーたちを見下ろす。


「お前たち二人が馬鹿騒ぎしてくれたおかげで、もう捕まるもんも捕まらんかもしれん。よーし、組み分けを変えよう……ネビル、俺と来るんだ。ハーマイオニーも。ハリーはファングとこの愚かもんと一緒だ」


 ハグリッドの組み分け変更にこれが順当だよなぁ、と考える。ハーマイオニーは一応ハグリッドと知り合いとはいえハリーほどハグリッドと身近なわけじゃない。ハリーにとってはハグリッドはある種の保護者だし――迎えに来てくれた人としてハリーも一応の信頼をハグリッドに置いているだろうし。


「久しぶり、ハグリッド」

「――ヒ?!」


 立ってた枝から飛び降りてドラコの後ろに降り立った。ドラコが目を剥いて私を振り返る。恐かった? ごめん、それが目的だから☆


「誰だ――ああ、鈴緒じゃないか! 久しぶりだな、何年ぶりだ?」

「少なくとも軽く十年は越えてると思うよ」


 ハグリッドの巨体に押しつぶされながらハグされる。ううん? 私とハグリッド、こんなに仲良かったっけ? 廊下で会った時に挨拶したくらいしか覚えないんだけどなぁ。


「あ! この前の――小早川さんっていうの?」


 ハリーが私を指さした。こりゃ、人を指差さないの。


「お、お前は誰だ?! 見覚えのない……ホグワーツの教師じゃないだろう?!」


 ドラコがハグリッドに抱き締められて足の浮いてる私に噛みついた。よほど恐かったんだろーな、悲鳴を上げさせた私が気に入らんに違いない。てか、ハグリッド放して。


「この人は鈴緒・小早川だ――この名前ならいくら物を知らんお前でも知っちょるだろう。ああ、あんたがここに来たってことは、この先は安心だな」


 なんだそりゃ。何故にそんな信頼が寄せられてるんだろーか。


「鈴緒・小早川だって――「小早川ですって?!」」


 ドラコの言葉がハーマイオニーに遮られた。あ、ドラちゃんってば嫌そうにハーマイオニーを睨んでら。ネビルは何でか――憧れの目を向けてきてるんだが。一体何なんだ。私が昔したことって言えば、ちょっと魔法薬学の権威になっただけじゃないか。毛生え薬とかでネビルが私を尊敬するとは思えないし、どーしたんだろーか。


「あの鈴緒・小早川?! もし本当に彼女ならもう六十を過ぎてるはずでしょ、どうしてこんなに若いの?」


 ハーマイオニーが急き込むように言った。ネビルの目が化け物を見る目に変わった。ネビル、あんたってば正直だね! そりゃあ私の見た目はヨーロッパ人感覚から言えば二十代前半だけどね。実際この姿も三十代前半だし、若く見えるのは当然なんだけどねぇ。


「日本人の神秘だよ」


 ハーマイオニーは納得できていないよーな微妙な顔をした。そりゃそーだ。これはハグリッド用の答えなんだから。貴女からの質問は予想外でした。


「あの、小早川さん。僕と以前会いましたよね?」

「ああ、うん。あのヒントの意味は分かったかい?」


 蚊帳の外にされたドラコが不機嫌そうにムスっとしてる。可愛いなぁ、撫でちゃえ。リリカルマジカル☆ ドラちゃんよハゲになーれ☆


「ハリー?」

「あの意味、どういうことなんでしょうか――あの、ヒントの意味は」


 答えちゃヒントじゃないだろ。ハーマイオニーが私とハリーを見比べて首を傾げた。


「答えは――学年末になれば分かる、かな?」


 あと一週間後の話だよ。

 不満そうなハリーからハグリッドに向き直り、じゃあ私帰るわと言おうとしたら。


「なら鈴緒はそうだな、ファングと一緒に行ってくれ。ハリーとそのマルフォイ家の息子と一緒だ」


 え、何で?


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