スリザリン寮から玄関ホールへの道すがら、時々ドラコは私がついてきているか確認しては安堵のため息を吐いていた。


「レイノ? いるかい?」

「いるよドラコ。いなくならないから安心して」


 姿が見えないのが不安なんだろーか。まあ、見えない存在を信じろっていうのは酷かな――でもそーすると誰も宗教信じれないよね。







 玄関ホールにはフィルチが待ってた。スリザリン生だろーがグリフィンドール生だろーが公平に嫌味なフィルチがドラコを苛めて遊び始めた。頭を撫でてあげればドラコは落ち着いて、フィルチは苛めがいのない一年生に鼻を鳴らした。


「ついて来い」


 ハリーとハーマイオニー、そしてその哀れな被害者ネビルが着いたのを見て、フィルチは顎をしゃくって外を示した。ランプに火が灯る。


「規則を破る前に、よーく考えるようになったろうねぇ。どうかね?」


 ドラコは怯えて見えない私の手を強く握り締め、力がこもりすぎてて痛かった。声を出せないのが辛いところだわ。


「ああ、そうだとも……私に言わせりゃ、しごいて、痛い目を見せるのが一番の薬だよ――昔の様な体罰がなくなって、全く残念だ……手首をくくって天井から数日吊るしたもんだ。今でも私の――」


 長々とした『恐がらせるための話』に震えるドラコに、申し訳ないが萌える。顔が真っ青よ、ドラちゃん!


「フィルチか? 急いでくれ。俺はもう出発したい」


 闇に沈んだり月が照らしたりと忙しい地上を手を繋いで歩く。ハーマイオニーをちらりと見ればやっぱりあっちも真っ青で、ネビルなんか今にも死にそうだ。でも、ハグリッドの元気な――豪快な声で顔をさっと上げた。


「あの木偶の坊と一緒に楽しもうと思っているんだろうねぇ? 坊や、もう一度考えた方が良いねぇ……君たちがこれから行くのは、森の中だ。もし全員無傷でもどってきたら私の見込み違いだがね」


 とたん表情が明るくなったハリーを見咎めてフィルチがクツクツと笑いながら言い、ネビルがこの世の終わりみたいな呻き声を上げた。ドラコが立ち止まったから腕を引いて無理やり進ませた。私がいると思ったんだろう方向を恨めしそうな目で見たけど、わたしはもうちょっと前だよドラコ。


「森だって? そんなところに夜行けないよ……それこそ色んなのがいるんだろう……狼男だとか、そう聞いてる――アイタ!」


 無駄に不安を助長するだけだったから頭をチョップした。――したら、ハリーたちは夜の森による超常現象だって思ったみたいで、更に顔を青くしてた。失敗失敗! でも気にしない!


「まあ、そんなことは今さら言っても仕方ないねぇ」


 フィルチはいつもにまして嬉しそうだ。まあ、フィルチの性癖を考えると納得せざるを得ないけど。


「狼男のことは、問題を起こす前に考えとくべきだったねぇ?」


 ガタブルと震えだしたドラコの肩を叩いて、背伸びして耳打ちする。


「ドラコ、安心して。私がついてるんだ、恐いことがあるわけないでしょ?」


 ヴォルディーとご対面するけど。

 震えの止まったドラコに騙してるって言う罪悪感は――あんまり感じなかった。だって仕方ないじゃん。


[] | []

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -