4 ハリーたちが三人で百五十点失ったのは、まあ当然ながら一日で広まった。ハリーたちは元々目立つ立場だったし、マクゴナガルは怒ってて、聞かれれば表情を固くして答えてた。だけど隠さなくて良かったと思うよ。隠すと逆に状況を悪化させるのは明らかだったから。 「レイノ」 ドラコがおずおずと声をかけてきたのは昼過ぎで、それまでは私に声をかけかねてたように見えたからとりあえず放っておいた。 「昨日の紅茶――美味かった」 「いや、どういたしまして」 ドラコの顔が明るく輝いた。その輝きがデコに移動すれば良いとか思ってごめんなさい。色々と申し訳ない気分だよ。でもハゲれば良いと思う。ああ、この矛盾した感情の行方はどこへ? ハゲれば良いのに、ううん、駄目よレイノ、こんなに純粋な少年の心を傷つけてどうするの?――高笑いしたいの。シャラップ! 「昨日の晩……僕のせいで五十点失ってしまったんだ。なあレイノ、僕はどうしたら良いんだ?」 何でいきなりお悩み相談室になってるんだ。 「授業中頑張るしかないよ。点数を失ったことを嘆くより、これから挽回することを考えたら良い。ね、頑張ろう。私も手伝うから」 私は思うんだが、どうしてハーマイオニーは点数を挽回しようとしなかったんだ? 恥知らずだと思われるから? でも大人しく縮こまってるのと、それでも発言して点数を稼ぐのじゃ、どっちが恥知らずかって言えば、失った分を取り戻そうとしない方だと思うんだ。反省するのは授業中以外にもできるけど、点数を稼ぐのは授業中にしかできないでしょ。 「だが! 点数を失くした本人なんだぞ、僕は」 「ドラコが失くしちゃったなら、ドラコが補わなくて誰が補うのさ。他人の稼ぐ寮点? そういうのは他力本願だよ」 死ぬ前の私の記憶で、「自己責任」って何度も繰り返してた人がいたって記憶がある。自己責任ってのはこんなのを言うのだよ。分かるかねワトソン君。……ワトソン君! ワトソンくーん! チッ、返事がない、ただの屍のようだ。 「そ、そうか……」 まだ十一歳なんだもん、ドラコもこれから学んでいけば良いと思うよ。ていうか、何でドラコの目が輝いてるんだ? 「ど、どったの、事故って頭のネジでも飛んでった?」 パパも始めは才能にあふれた素敵な人だったのに……交通事故で頭のネジが飛んでっちゃったんだよね。大丈夫、その遺伝子ははじめちゃんに受け継がれてるから! 「いや――レイノには感謝してもしきれないな、と、な。礼を言う、レイノ」 「お、お気になさらず?」 一体どうしたドラコ。ついにおかしくなったのだろーか。いや、お姉さんは君がハゲるのは嬉しいが、浮世離れした感性の人になるのは歓迎できないぞ? |