レイノと昨日喧嘩して、そのままズルズルと仲直りできないまま夜になった。今晩、ポッターたちはドラゴンを塔に持っていく……レイノが僕の気をそらそうとしてることには薄々気づいてた。だって、僕があいつらを見てると毎回絡んできたからさ。きっとポッターたちに頼みこまれでもしたんだろう、あいつは人が良すぎるから。





「先生、誤解です! ハリー・ポッターが来るんです……ドラゴンを連れてるんです!」

「なんというくだらないことを! どうしてそんな嘘を吐くんですか! いらっしゃい……マルフォイ。あなたのことでスネイプ先生にお目にかからねば!」


 下らないことをしたのは僕じゃなくてあいつらだ。あいつらと、それと森小屋の蛮族。ドラゴンを飼うことは違法だ――それくらい僕でも知ってる。だってのにあの脳味噌の足りない野蛮人は飼ったし、それをポッターたちはそれを隠そうとレイノまで使った。グリフィンドール生なんかが、誇り高きスリザリン生を使ったんだ!

 耳を引っ張るマクゴナガル教授を、痛みで生理的に出て来る涙で滲んだ目で睨んだ。教授――と呼ぶのも嫌になるこの老婆は、僕の言葉を頭ごなしに否定したんだ。証拠だってあるんだ、あのウィーズリーの馬鹿の兄とかいう男からの手紙が。証拠を見ればこの老婆も自分の間違いに青くなるに違いない……部屋に置いてきた。

 引きずられるようにしてスネイプ教授の部屋に着いた。急かすようなノックをして、老婆はスネイプ教授を呼んだ。


「セブルス! 貴方のところの生徒が、脱走しました!」


 灯があるとはいえ薄暗い廊下に、部屋から漏れる明るい光が差した。教授のいつも青白い顔が僕を見下ろした。


「礼を言う、マクゴナガル教授。……Mr.マルフォイ、これはどうしたことだ?」

「教授、ポッターです! ポッターがドラゴンを連れて、抜けだしたんです!」

「まだ言いますか、そんな嘘を!」

「少々黙っていて下さるか、マクゴナガル教授? どういうことだ、マルフォイ」


 僕はあのウィーズリーの手があんなに腫れている理由や、ウィーズリーから借りた本の間に、今日ドラゴンを引き渡すつもりだという内容の手紙が挟まっていたことを話した。


「抜け出す嘘にしては悪質です!」


 居座る老婆にウンザリした。この老婆はきっと、スリザリン生が嫌いなのだ。グリフィンドールらしいじゃないか。公平さに欠けるな、と僕は思った。教授が紅茶を巨大な瓶から注いで下さった。


「飲みたまえ。もしポッターたちが抜け出しているとすれば、フィルチが見つけることだろう。今その手紙は持っていないのだな?」

「有難うございます教授。はい、手紙は寝室に置いてあります」

「明日持って来い――授業の前にだ。手紙の送り主の名前は覚えているか」

「チャーリー・ウィーズリーと署名されてました」


 教授が片眉を上げて老婆――仕方ないからマクゴナガル教授と呼ぼう――を見上げた。


「たしか――貴女の寮の卒業生だったと記憶しているが、どうでしょう、マクゴナガル教授」

「ええ――ええ」

「たしか、ルーマニアでドラゴンの研究をしているはず、ですね?」

「ええ、そうです」

「ここにいるマルフォイがそれを知るには、彼は無名すぎる。さて、マルフォイがどうして嘘を吐いたと思われたのですかね」


 僕は教授を尊敬の目で見つめた。教授は理性的にマクゴナガル教授を論破したんだ、僕も父上や教授の様な大人になれるだろうか?





 マクゴナガル教授がふさぎ込んだ顔で部屋を出て行った後、教授が僕を振り返り言った。


「その紅茶はレイノがお前に用意したものだ。明日、会ったら礼を言っておけ」


 僕は頬が熱くなるのを感じた。レイノの昨日の言葉が思い出される。『ドラコは抜けてるところがあるからね、その内何かでヘマすると思うよ』。

 僕があの場で手紙を持っていたら確実にポッターたちを捕まえることができただろう。なのに僕が持ってなかったせいで、ポッターが捕まらないかもしれない。レイノはポッターたちから話を聞いてて知ってただろうから、僕の起こす行動も予想がついただろう。恥ずかしい――自分の短所を注意されたからって怒って、忠告を聞かなかった。なんて僕は格好悪かったんだ。レイノ特製の不味い紅茶だろうと思って呷れば、思わない豊かな香りに目を見開いた。


「美味しい……」

「『美味かった』とでも礼を言っておけば良い」


 その後僕は教授に送られて寮に戻り、明日のことを考えながら寝た。話しかける言い訳をくれたレイノが、凄く大人だと思えた。


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