19


 時々ドラコがニヤニヤと三人を見てるから、本当に気持ち悪い。


「ドラコ、本当に頭おかしくなったんじゃないの? 時々気持ち悪いよ」

「失礼な。僕は至って正常だぞ」

「鏡見てから言ってよ」


 手鏡でちょっとにやけたままの顔を映せば、ドラコは自分の口元をバシンと隠した。


「僕、こんな顔してたのか……?」

「うん、近からず遠からず」


 実はこれには魔法がかかってて、無表情でも『にやけ顔』に映るという優れもの。これでアブラカタブラをおちょくって遊んだのも懐かしい思い出だ。


「ところで何見てたの――ああ、ウィーズリー? 右手が恐ろしいくらいに膨れてるね」

「ふふっ。ウィーズリーがああなった理由を知っててね。あれじゃ羽ペンなんて持てないだろうし、保健室行きだろうな」


 ノーバートに噛まれた手が、人類には真似できない太さにまで膨れてた。あれが全部筋肉だとしたら――ロンは人類最強になれるな。


「ひやかしに行くの止めといた方が良いよ。あのムキムキな手じゃドラコなんて一捻りだ。拳が唸ると思う、風を切って」


 ロンたちに絡みに行こうとするドラコの袖を引いた。


「いや、あれはただの腫れだから大丈夫だ。強くなるどころか弱くなってるだろう」

「えー、筋肉なら面白いのに」

「右手だけ筋肉の塊になってどうするんだ」

「腕相撲負けなし」

「あれは腕力だろう」

「相手の手の骨を砕くんだよ」

「反則じゃないのか、それ」


 バキーン! と折るのだ、と言えば脱力された。何故だ。


「お前は平和だな、レイノ」


 ドラコがため息をつきながら言った。悪く言うつもりじゃないのは分かるから、怒りはしないんだけどさ……私はチミの三倍以上生きてるんだぜ、ドラちゃん☆ 尊敬してくれても良 く な い か? やらないか?


「それはアレだよ」


 向こうでハリーとハーマイオニーがロンに保健室に行けって騒いでる。


「平和の大切さを知ってるからさ」


 ヴォルディーも悪の道になんか走りださなかったら、今も私と平和に過ごせてたのかもしれない。仮定の話だけど。


「あいらぶぴーす、はっはっは」


 平和のためなら何でもできる子だよ私は。

 目指せ、セブと過ごす、平和な余生!


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