15 梟用クッキーを持って、羽毛の機嫌を伺った。最悪みたいだ。そっぽ向いて、こっちを見てもくれない。地味に傷ついた……私が悪いんだけどね! 「羽毛、許してくれないかなぁ? 悪気はなかったんだよ、ね? クッキー上げるからさ、ごめんよ」 一時間目が終わり、今は休み時間だ。鐘が鳴り響いているのを聞きながら羽毛の背中をゆっくりと撫でた――ら、クッキーを一枚だけひっっ銜えて飛んでっちゃった。 「う、羽毛―っ!」 羽毛は私の手が届かないところにとまってクッキーをガジガジやった。ガーン! と実際口に出してオーバーラクションをとってみたけど、振り返ってもくれなかった。こういう時マンガや小説の主人公は「もう君なんか知らない!」だとか言うんだろうけど、この場合こっちが悪いんだから怒ったり諦めたりという反応をするのはお門違いだ。平身低頭して謝りまくるのが当然でしょ。 「許してよぅ、数か月――てか三カ月も放置して悪かったよ! セブと一緒にいるから君に頼むことがなくて、来るのが疎遠になっちゃったんだ。本当にごめん、怒りを鎮めてくれなーい?!」 そりゃあ、二十年前の私だったらこんなに簡単には忘れなかっただろうけどさ、現に間に二十年開いちゃったんだ、仕方ない部分もあるよね……? 床に両手を突いて嘆いてると、私の頭にポスンと重みが。右手を上げて確かめれば――このふわふわは羽毛だ! 「羽毛、許してくれるの?」 柔らかいホウ、という鳴き声に安堵した。君の心が広くて良かったよ本当に。 私の前に、パサリと手紙が落ちてきた。どうやら羽毛が落としたらしい。拾い上げて見れば、レイノ様へと書かれてる。二つ折りのそれをもしやと思いつつ開けば―― 『いよいよ孵るぞ』 「運命は残酷だぁぁぁぁぁぁぁ!」 床を拳で殴りつけた。なんて、なんてことだ! 人生って本当にままならないな。誕生シーン見逃しちゃったよ、畜生! ハグリッドが瓶に産火を取ってくれてる可能性に賭けよう。でもあのハグリッドだから忘れてて、ノーバートの世話に心躍らせてすっかり頭から飛ばしてるかもしれない、いや、してる可能性が限りなく高い。 嘆く私に羽毛がホーと鳴いた。これは全面的に私が悪いから羽毛を責めることなんてできなかった。その後はすることもなかったし、羽毛と梟用クッキーを食べることにした。やっぱり私にはこっちの方が合うと思う。本当に。 「――――レイノッ!」 そんな風にほのぼのと過ごしてた私の前に、ドタタタタタ! と盛大な足音と共に現れたのは。グリフィンドールの赤いカラーをした―― |