ドラコに抱えられて移動。最近は急に寒くなってきたし、こんな寒い中薄着をするわけがない。セーターにコート、マフラーなんて目じゃないぜ、だってシュラーフザック、つまり寝袋に包まれてるんだもん。

 恍惚とした表情でお姫様だっこされてる私を見た生徒たちがギョットした目で見てきたけど気にしない。この暖かさは伊達じゃないのだ。


「レイノ……っ、いい加減、腕が重いんだ、がっ……!」


 息が切れてきたみたい。ドラちゃん馬鹿ね、こういうのはクラッブとかゴイルに任せなくっちゃ。いくら私が『ドラコ』に頼もうと、君の体力じゃ私を連れてくのは無理だよ。


「じゃあクラッブかゴイル、どっちか代わって」


 私がシュラフから出ればすべて解決だけど、実はこの中で私薄着なんだよね。もう出るに出れないというか。出たくないって言うか。


「レイノ、さっきから聞こうか悩んでたんだけど――どうしてそんな恰好してるのよ?」


 パンジーが芋虫な私に聞いてきた。今さらだよパンジー。


「寒いから☆」

「あ……そう」


 パンジーに呆れられた。何でだっ! 夏場でもジャンパー着て暖炉に火を熾すイギリスだぞ?! 本州生まれの本州育ち、それもまあまあ南の方で過ごしてきた私には地獄なんだよっ! 感覚は日本人の時のままだしさ! シュラフ暖けぇ。こたつ欲しい。作ろうかそれとも取り寄せようか。コンセントと電圧の問題は変圧器とかでどうにかなるし――取り寄せるかな。


「顔が寒い。寒いよー寒いよー、こんな試合どうでも良いから暖炉に手をかざしてたいよぅ」

「こら、暴れるなレイノ! 落ちるぞ!」


 ゴイルに抱っこされることになった私は見た目の通り芋虫みたいに暴れた。だって顔が寒いんだ。吹き付ける冷たい風が痛いよぅ。ゴイルの食べ物臭い服に顔を隠そうかと思ったけど、寒さと吐き気を天秤にかけたら寒さが勝った。


「レイノ?」

「あ、アメリア?」

「大人しくしてること。良いわね?」

「はい、アメリアさん」


 やっておしまいなさいなんて言えない立場ですごめんなさい。我儘言ってる自覚はあるんですが、甘やかしてくれる皆が心地良くて甘受させて頂きましたごめんなさい。お顔が怖いですアメリア様。


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