2 クリスマス休暇が明け、ハーマイオニーが帰ってきた。ハリーはロンにも言ったこと――ダンブルドアが「英雄は二人いてはいけない」と言ったことを話した。 ハリーは手の中のティーカップを弄りながら呟く。 「英雄って誰のことを言ってるんだろう?」 ニコラス・フラメルも大事だが、どうもこの言葉が引っ掛かってならなかった。 「ダンブルドアとか、歴史でいえばマーリンとか?」 ロンが頭を捻っている。眉間に皺が寄って、スネイプみたいな谷になっていた。悩んで答えが出なかったからか、そのままソファーに倒れ込んでしまった。 「なら、ハリーも英雄よ」 ハーマイオニーの言葉に二人は目を丸くした。ロンも体を起こす。 「何でそんな目をしてるのよ。ハリーは魔法界の英雄だわ。だって例のあの人を倒したのよ?」 ハリーはそういえば自分は英雄だと思われていることを思い出す。最近好奇の目が向けられなくなっているためか、すっかり忘れていたのだ。 「なら、英雄は二人いらないってどういうことだい? ハリーにダンブルドア、英雄なんてとっくに二人いるじゃないか」 ハリーを指差し言うロンに失礼よとハーマイオニーが片眉を上げる。 「きっとそういう意味で言ったんじゃないんだわ。レイノはハリーのお母さんにそっくりなんでしょう? だったらハリーと血が繋がってる可能性が高いわ。もしかしたら兄弟かも」 それにはロンが頭を横に振った。 「それはないよ。ハリーのパパとママはグリフィンドールだっていうし。スネイプがどうして引き取るっていうんだよ」 「それは――うーん」 「もしレイノ・スネイプがハリーの兄弟だとするよ? 憎いグリフィンドール生の娘を可愛がるはずがないじゃないか」 悩むハーマイオニー。ハリーもどこかでハーマイオニーに賛成したい気持ちがあったが、ロンのいうことも筋が通っており否定しきれずにいる。 「英雄――この意味さえ分かればなぁ」 ハリーは溜息を吐いた。 「レイノ……」 母親そっくりの少女を思い浮かべて、ハリーは強く目を閉じた。 まさかそれが真実とはつゆ知らず、ハーマイオニーの仮説は却下されたのだった。 |