クリスマス休暇が明け、ハーマイオニーが帰ってきた。ハリーはロンにも言ったこと――ダンブルドアが「英雄は二人いてはいけない」と言ったことを話した。

 ハリーは手の中のティーカップを弄りながら呟く。


「英雄って誰のことを言ってるんだろう?」


 ニコラス・フラメルも大事だが、どうもこの言葉が引っ掛かってならなかった。


「ダンブルドアとか、歴史でいえばマーリンとか?」


 ロンが頭を捻っている。眉間に皺が寄って、スネイプみたいな谷になっていた。悩んで答えが出なかったからか、そのままソファーに倒れ込んでしまった。


「なら、ハリーも英雄よ」


 ハーマイオニーの言葉に二人は目を丸くした。ロンも体を起こす。


「何でそんな目をしてるのよ。ハリーは魔法界の英雄だわ。だって例のあの人を倒したのよ?」


 ハリーはそういえば自分は英雄だと思われていることを思い出す。最近好奇の目が向けられなくなっているためか、すっかり忘れていたのだ。


「なら、英雄は二人いらないってどういうことだい? ハリーにダンブルドア、英雄なんてとっくに二人いるじゃないか」


 ハリーを指差し言うロンに失礼よとハーマイオニーが片眉を上げる。


「きっとそういう意味で言ったんじゃないんだわ。レイノはハリーのお母さんにそっくりなんでしょう? だったらハリーと血が繋がってる可能性が高いわ。もしかしたら兄弟かも」


 それにはロンが頭を横に振った。


「それはないよ。ハリーのパパとママはグリフィンドールだっていうし。スネイプがどうして引き取るっていうんだよ」

「それは――うーん」

「もしレイノ・スネイプがハリーの兄弟だとするよ? 憎いグリフィンドール生の娘を可愛がるはずがないじゃないか」


 悩むハーマイオニー。ハリーもどこかでハーマイオニーに賛成したい気持ちがあったが、ロンのいうことも筋が通っており否定しきれずにいる。


「英雄――この意味さえ分かればなぁ」


 ハリーは溜息を吐いた。


「レイノ……」


 母親そっくりの少女を思い浮かべて、ハリーは強く目を閉じた。









 まさかそれが真実とはつゆ知らず、ハーマイオニーの仮説は却下されたのだった。


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