10


 恐怖でハリーの顔は引き攣った。見えないはずのお化けが、この部屋にたくさんいるのだろうか? 視線が背後と鏡を往復する。そして、気づいた。

 その瞬間、どうやってこの部屋に辿り着いたのかなど、ハリーの頭からは瞬時に吹き飛んでしまった。何故って、鏡面の向こうの影はきっと彼の両親で――彼に向って微笑んでくれているのだから。


「母さん?……父さん?」


 自分そっくりに膝小僧か飛び出している老人、同じ目や鼻を持った女性男性……ハリーはこれが自分の家族の姿だと確信した。

 鏡の中の女性をまじまじと見る――誰かに似ている。燃えるような赤い髪、優しく笑んだその女性は。




「レイノ……?」





 ハリーの口からぽろりとその名は零れた。あまりにハリーの母親と、レイノはそっくりすぎたからだ。レイノの瞳をハシバミ色じゃなくて緑にすれば、この女性を縮めた姿になるだろう。――ハシバミ色。ハリーは父親を見上げた。ハシバミ色の瞳、自分とそっくりな男。

 ハリーの心に、ぼんやりとした疑問が生まれた。レイノは、僕と、何らかの関係性――血縁があるのでは? と。でもなければここまで母さんに似ているはずがないじゃないか。父さんと同じ目をしてるはずないじゃないか。妹? でも、妹だと言うなら下の学年に入るはずだし、スネイプみたいな陰険スリザリン寮の寮監の子供だっていうのはおかしい。父さんも母さんもグリフィンドール出身だって聞いたんだから――

 情報が少なすぎて、ハリーはこれが正しいと言いきれる答えを出せなかった。遠くからの物音に正気付くまで、ハリーは鏡を見つめながら悩み続けていた。


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