8 ハリーは明日の朝のことを考えながら眠りに就こうとしていた。明日はクリスマスで、プレゼントをくれるだろう人の心当たりは数人しかいなかったけれど楽しみで仕方無い。レイノは送ったキャンデー詰め合わせに喜んでくれるだろうか? レイノにプレゼントを貰えるとは思わないけれど、貰えたら嬉しい。ああ、明日の朝が楽しみで仕方がない……。 ゆっくりと落ちていく瞼に逆らわず、ハリーは眠りの世界へ旅立った。 「ママは身内じゃないとますます力が入るんだよ」 思わぬクリスマスプレゼントにハリーは喜んでいた。ロンのお母さん――ほんの少ししか言葉を交わさなかったけれど、見るからに優しそうな人だった――のくれたセーターに自然と頬が緩んだ。 「ロンどうして着ないんだい? 着ろよ、とっても暖かいじゃないか」 急かすジョージに愚痴を言いながらロンはもそもそとセーターを着る。 「イニシャルがついてないな。ママはお前なら自分の名前を間違えないと思ったんだろう。でも僕たちだって馬鹿じゃないさ――自分の名前くらい覚えてるよ。グレッドとフォージさ」 ジョージがニヤリと笑いながら言った。 「この騒ぎはなんだい?」 特にこの部屋は騒がしかったらしく、監督生――パーシーがひょこりと顔を覗かせた。双子の姿に納得したような、嫌そうな顔をする。 「監督生のP! パーシー、着ろよ。僕たちも着てるし、ハリーのもあるんだ」 「ぼく……いやだ……着たくない」 逃げを打つパーシーをひっつかまえ、双子は頭から彼の分のセーターを被せた。ここまで持ってきてしまったのが運の尽きだ。 「いいかい、君はいつも監督生たちと一緒のテーブルにつくんだろうけど、今日だけは駄目だぞ。だってクリスマスは家族が一緒になって祝うものだろ」 ジョージがパーシーの腕を掴む。フレッドも反対側からそれに倣う。 「ちょ、フレッド! ジョージ!」 暴れるパーシーを連れ去る双子に、ハリーは苦笑した。嵐のようにやってきて、同じ勢いで去っていく二人はとても楽しい。 「ねえ、ハリー。まだもう一つあるみたいだけど、開けないのかい?」 見えなくなった三人の背をいつまでも追っているハリーにロンが訊ねた。 「ああ、開けるよ。誰からだろう?」 残った一つは小さい割に重量のある箱型のもので、包装紙を破ればアルミ製の缶が出てきた。蓋を開ければバターの香りとカードが零れてきた。 「HAND MADE byレイノ・S――レイノからだ!」 チョコとプレーンのミックスで、ゆうに三十枚は入っている。カードには保存を良くする魔法が掛かっていると書かれていた。 「スネイプからかい? あいつがプレゼントを渡すなんて想像もつかないよ。ねえ、手作り(ハンドメイド)って? 手で作らなかったら何で作るって言うの?」 「マグルじゃあ機械が作ってるよ。レイノはきっとマグルに詳しいんだね」 機械って聞いたことがある、パパが前言ってた! と目を輝かすロンの質問を流して、ハリーはクッキーをかじった。良質のバターを使っているようで香りが良く、でもとても薄口だった。 「甘くない」 「一枚ちょうだい――砂糖けちったんじゃない?」 失礼なことを言うロンと一緒に首を傾げ、ハリーはしかし喜びに包まれていた。レイノがプレゼントをくれた、そのことが嬉しくて。 |