ウィーン少年合唱団が中でも有名だが、少年合唱団はいくつもある。それの一つなんだろうな、十一歳以下の少年(きっと魔法族。確実に魔法族)で構成されたアカペラーズが中央の台で待機してる。頬は薔薇色、髪はくるりと波打って、さながら絵画の天使のようだよ。これが成長するとむさくるしくて体毛の濃いガイになるんだから運命は皮肉だ。


「皆様、本日はマルフォイ家のクリスマスパーティーにお越しいただき有難うございます」


 ルシウスが開会の挨拶を述べ、パーティーが始まった。セブと手を繋いでいたら微笑ましいものを見るような目で見られた。私はもう十一だ! 老け顔じゃないんだよ!







「セブ、私もう疲れたよ」


 アントワープ聖母大聖堂のルーベンスの絵の前で、愛犬抱えて冷たくなりそう。私は犬飼ってないから羽毛になるな。じゃあ羽毛抱えて安らかに冷たくなろうか。ヘンドリック・レイ来んの遅いんだよ!


「ドレス選びが大変だったようだな、レイノ」


 ふらふらの千鳥足で現れた私を見てセブも分かってたんだろう、私の頭を撫でると抱き上げてくれた。セブはじゃあ私のアッシー君だね。アッシー君、私あのローストチキンが欲しいよ。ソースはかけなくて良いからね、単なる肉を食べたいんだよ。




 合唱団が美声を披露してくれてるけど、はっきり言って歌はどうでも良かった。ハレルヤと繰り返し歌われても、耳に指突っ込みながら『あ、そう』としか言えない。もうちょっと別の歌にしようぜ、例えばカーロ・ミオ・ベンとかアン・ディ・ムジークとか――いけね、これイタリア語とドイツ語だわ。でもハレルヤもラテン語だから良いじゃん。






 食えるものだけ食べて、疲れも取れてきたからセブから下りた。セブの腕もそろそろ痺れてきただろうしね。

 セブの知り合いに挨拶して回る。主催者ってかルシウスにはもうパーティーの始まる前に挨拶してあるから飛ばした。


「ふむ。パーティーには久しぶりに出たが、なかなか楽しめるものだったのだな」


 セブが満足そうなのはアレだ。娘自慢をできたからだろう。私はもう、恥ずかしくて顔を上げてらんなかったよ……セブ、もうそこらへんで止めて下さい。てか何で三歳の時に庭の枝折ったこと知ってんの? 今の杖買ってもらうまではあれ振って魔女の気分満喫してたけど、セブは知らないはずでしょ?! どうして知ってるのさ?!


「そ、そう?」


 楽しんでるセブに比べて、私はもう減量した気分だ。おうち帰りたい。


「ああ。お前もいつもより食べているようだし、良かった」


 娘自慢に満足してただけじゃなかったんだね、セブ! その親ごころにキュンと来たよ! このままじゃ私キュン死にしそうだっ。


「うん、今日は楽しいねぇ」


 遠目のルシウスはハゲて見えたし、ドラコもスキンヘッドに見えたし、セブは萌えをくれたし。素晴らしい日だ、クリスマスイブ。これから君の誕生日を祝えそうだよジーザス。おめでとう、そして有難う素敵なプレゼント。


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