私に似あう(らしい)ドレスを選び出すまで何百着となく着せかえられ(魔法でだったから良かったものの、これがいちいち脱いで着てを繰り返さにゃならんかっとのだとしたら私は死んでたな)、パーティーが始まってもないのに私はもうクタクタだった。ナルシッサは生き生きしてる。シシー、私は貴女より年上なんだよ実は。


「これが良いわ!」


 山のようなドレスの中から十数着に減り、また同じのを着ることになって、一番似合う一着が選び出された。貝殻の裏みたいな、緑色の、波打った色合いのドレスだった。さり気無い銀糸のアクセントが上品で、袖がないから上に一枚羽織る。髪は前にルシウスがくれた髪留めでまとめた。うむ、良いのではないかな?


「ああ、セブルスの娘だなんて残念だわ。私の娘になって欲しいくらいなのよ」


 ノリノリのナルシッサはそんなことを言った。うーん、もし私がマルフォイ家に引き取られてたら、アブたんの禿げ化進行状況を生で見ることができたのか。ちょっと心惹かれるけど、『セブの娘』なことが一番良いな。大好きな人の一番になれたんだから。







 ――って! あわわ、時間がヤバい。あと一時間ねえ! シシーも客のお出迎えの用意せにゃならんし、私ばっかりにかまってたらシシーの着替える時間が失せる!


「ナルシッサ、私だ」


 ルシウスもそう思ったんだろう、ノックの後部屋に入ってきた。私の姿を見て感心したように声を上げる。


「似あうな」

「でしょう? この髪留めともとっても合うのよ」


 シシーが私をくるりと回転させた。


「こんなに似合うのだったら――レイノ。このドレスを貰ってはくれないか?」

「ええ?!」


 いや、この服銀糸とか縫い取られてるよ? この服一枚でロンドンの一等地で土地を買えると思うよ?!


「嫌なのか?」

「いえ、こんな素敵なドレスを頂いてしまうなんて私にはもったいない気がして」


 私だって貯金くらいあるわい。でもさ、流石にこんな高価な物を気軽に譲っちゃえるほどじゃないんだよ。長者番付になんて載ってないんだよ。


「そんなことを気に病む必要はない。私が差し上げたいと思ったのだから、受け取ってはくれまいか?」


 おう、上流の人間だなぁ、ルシウスは。丁寧だけど有無を言わせないな。自分がしたいと言ったんだから、文句を言わずに従え、とも取れる。そんなつもりはないんだろうが。こういうのは嫌いどころか好きだよ、格好良くて惚れちゃいそうだ。


「では、お言葉に甘えて頂きますね」


 もらったは良いけど、いつ着るってんだろうか。


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