怒鳴られてる外人さん、怒鳴ってる日本人……なんだなんだ、どーしたどーした。


「どうしたの、おじさん?」


 なだめる意味も込めて聞けば、この外人さんがおじさんの店の商品をつまみ食いしちゃったらしい。食うなら買え! ということか。でもなー、外国じゃあ、味見させてくれる店が多いんだよなー。ここらへん、東京って世知辛いなぁ。主要都市化して、逆にケチになっちゃったんだな。落語も前払い制が東京ってか江戸で、後払い制が大阪だったし。


「おじさん、この外人はそんな悪さしたくて食べたんじゃないよ、日本のやり方を知らなかっただけなのよ」


 ううむ。久しぶりに人に対して日本語を話すが……これで日本語おかしくないよね? 自信なくなってきた。脳内はいつでも日本語――というわけじゃなくて、日本語と英語が混じってるからなぁ。英語ナイズされてたらどうしようか。


「それでもだ。ここは日本だ」


 おじさん、私の気遣いに答えてくれるつもりはないのか。仕方ないので外人を振り返った。


『お兄さん、ここの棚に並べられてたのは味見しちゃいけない商品だったんだよ。知らなかったから仕方無いとは言え、この人が怒ってるのもある意味仕方無いんだ』


 自慢じゃないが私はクイーンズイングリッシュを話せる。てか、それを手本にして学んだから、それが基準なんだよね。


『そうだったのかい? 僕の田舎じゃ味見なんていつでもさせてくれたんだけど』

『まあ、所変わればってことだよ。ローマに入りてはローマに従え。今度からつまみ食いしちゃ駄目だよ』


 二メートル近い巨体の兄ちゃんはどうやらアメリカ人みたいで、Rの発音がちょっときつかった。兄ちゃんにつまみ食いの分払わせ、一緒に町をぶらついた。







『君、英語上手だね。それもイギリス英語だろう?』

『三十年向こうで暮らしたら上手にもなるよ』

『三十年? 君、二十五歳くらいにしか見えないよ!』

『レディーに年齢の話をさせるんじゃありません――まあ、日本人は童顔なのさ。お兄さんはアメリカ?』

『うん。田舎の方なんだけどね。大学で知り合った子を訪ねてきたんだけど、場所がよく分らなくて』

『案内しようか?』

『お願いできる?』

『地図読めば早いから』


 その後お兄さん(でも私のが年上……)を案内し、その日本人にスーパーまでまた案内してもらってラーメンを購入した。周り道だったことを否定できん。


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