クリスマス休暇、私はハリーのがみぞの鏡を見ようが見まいがどうでも良かった。今重要なのは、どうやって日本に行くかだからだ。チキ○ラーメン美味しいな、のCMが頭の中を回っている。出前○丁でもサッポロ○番でも良いよ。

 私はソファーで日刊予言者新聞を広げるセブに言った。


「セブ、ちょっと遊びに行ってくるね」


 箒で飛んだら、一日や二日で帰ってこれるはずがないから、姿現わしだ。それしかない。


「ああ。どこまで行くんだ?」


 セブが顔を上げた。そんなに行きづらい場所でもないし、時代が違うとはいえ前世の私の祖国だ。行って困ったことになるはずもない。


「ちょっとそこまで」


 ちょっとそこの、日本まで。時差の九時間は魔法でカバー。チートをいま使わずしていつ使う。


「気をつけてな」

「うん、じゃあ行ってきます」


 家を出て、この容姿じゃ奇異の目で見られるだろうから姿を変えた。ヴォルディーと別れた時の姿で良いな。ハシバミ色の目だけど、日本人って人の目見て話さないし、分からんだろ。気にしないー気にしないー☆


 マルコメ坊主のとんち話のテーマ曲を口ずさみながら服も変える。お顔は残念で三級品なんだよね。


「では、いざ! 懐かしの我が祖国へ!」


 角を曲がってきた男――セブとどっこいどっこいの年だな――が目を見開いて私を凝視したけど、魔法使いみたいだったから気にせず飛んだ。見覚えなんてない男だけど――誰だったんだろーな。










 路地裏に姿を現わし、着地がちゃんとできたので三百点! と小さく呟いてみた。イタい子だな。時間もちょうど昼前くらいで、うむうむ、余は満足じゃ。

 日本の金はグリンゴッツでもう換金してある。うむうむ、五千円札が樋口さんじゃないのが逆に新鮮だね。二千円札もまだだし――うーん、年号眼鏡って確か、千九百九十年代にもあったよな。まあそれは置いておいて、即席麺だ。ラーメンラーメン!

 なるべく大きな街に行こうと思ったから東京なんだが。スーパーを見つけるのが大変だ。デパートしかない……よくよく考えてみれば、都市部過ぎて市街地じゃねーやココ。ああ困った。どこまで行けば市街地なのか、東京に詳しくないからさっぱり分らん。

 でも三十年ぶりの日本だし、ちょっと人込みに流されてみるのも楽しいかも知れん。私は流れに乗ってみることにした。人ごみに流されて、変わっていく私を――という懐かしい曲が脳内でリピートした。この時代じゃナウな曲か? ナウって言葉も現代じゃ死語だったんだけど。ナウでヤング! ナウでヤング!







 スーパーには行きつかんかったけど、商店街に辿り着いた。私って運良いんじゃなかろうか。


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