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 マルフォイの介添え人がレイノだとパーキンソン? だとかいう女の子が言った時、ハリーは頭がクラクラするような感覚に襲われた。

 レイノが、何だって? 介添え人というものが何なのかは知らないけれど、レイノが『マルフォイ側』だということに怒りが湧いた。馬鹿を言うな、レイノは僕のだ! と叫びそうになって、自分の考えたことながら慌てた。

 なんだ、なんなんだ? これはまるで、僕がレイノを好きみたいじゃないか。付き合ってもいないのに自分のモノ扱いして、嫉妬して――嫉妬。そうだ、僕はスネイプ――薬学教授の方のスネイプだ。レイノじゃない――に嫉妬してたんだ。親子だからってレイノを占領するなんて、許せない、と。

 ハリーはますますマルフォイに負けられない気がした。『ただの』同寮の少年であるマルフォイに勝てなくて、どうしてスネイプに勝てるというんだ?


「遅いな、たぶん怖気づいたんだよ」


 トロフィー室でレイノとマルフォイ(マルフォイはついでだ)を待ち始めて数分経った。来ない二人を腰ぬけだと顔に書いたロンが囁いた。マルフォイはともかく、レイノが腰ぬけとは思えない。


「スネイプ先生、本当にここに生徒が?」


 二つある扉の片方から、フィルチの声が聞こえた。足音は二つ――フィルチの言葉から、一つはスネイプだろうと分かる。


「ああ――マルフォイがポッターと決闘の約束をしたらしくてな。レイノまで巻き込んでいたから課題を与えて帰らせた……。少なくともポッターと、その介添え人がいるはずだ」


 スネイプの言葉に、今は減点の危機だというのに、ハリーは安堵した。レイノが来ない。それは、レイノが危険な目に遭わないということを示している。


「さあ、良い子だ。しっかり嗅ぐんだぞ。隅の方に潜んでいるかもしれないからな」


 扉が開き、ミセス・ノリスを連れたフィルチとスネイプが入ってくる。だがその時にはもうハリーがロンやハーマイオニー、ネビルと共に曲がり角に消えていた。










 心臓が凍るように痛い。冷たすぎて逆に熱く感じるように、血の気が引いているはずなのに心臓は跳ねるように鼓動を打っていた。


「どっかこのへんにいるぞ。隠れているに違いない」

「もしくは、ポッターたちが腰ぬけであった、ということか」


 スネイプの言葉にロンが顔を見る間に真っ赤にした。モゴモゴと口の中で文句を言いだす。ハリーは見つかっては敵わないのでロンの口を押さえた。

 恐怖で強張った足を動かし進んでいると、耐え切れなくなったらしいネビルが突然悲鳴を上げて走り出した。ロンに抱きつき、もつれ合って倒れる――それも、鎧に向かって。

 静かな夜を引き裂く大音声。ハリーは先頭に立ち三人に叫ぶ。



「逃げろ!」




 どこを走っているのか、彼らを導いているハリーにさえ分からない。まだ二週間目なのだ、完全に分かる筈もない。とりあえず走って走って、裂け目のあるタペストリーの向こうに見えた抜け道を行き、妖精の魔法の教室近くで立ち止まった。


「フィルチを巻いたと思うよ」


 ゼイゼイと息を弾ませながら言えば、ハーマイオニーが深呼吸をしながら鋭い目でハリーを見た。


「だから――言ったじゃない。自分のことばかり気にして……もし見つかって減点でもされてみなさい、明日の汽車で家族への言い訳を考えないといけなくなるんだわ」

「僕に親はいないよ」


 知ってるでしょ、と答えれば、ハーマイオニーは更に顔をしかめた。


「育ての親ってことよ。揚げ足取らないで」

「そんなのどうでも良いよ。グリフィンドール塔に戻らなくちゃ、できるだけ早く」


 ロンが言い、その意見にはみんな賛成だった。


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