8 毎晩就寝前に一時間、私は魔法薬学教授の自室で過ごしている。つまりまあ、セブの部屋だ。 室内は明るく、目に痛くない程度の光が照らしていた。みんなはセブの部屋は暗くてどうだこうだと言うけど、レポートの採点とかするのに暗かったら視力落ちちゃうからね。明るさを調節してるらしい。ついでに今の明るさが一番明るく、私が来た時用だそうだ。 「はい、セブ」 最近は紅茶はドラコが淹れてくれるし、その前の数十年はヴォルディーが淹れてくれたし(時々アブラカタブラとかオリオンとか)、私の淹れる紅茶は不味い(不味く淹れてるつもりはないんだがな)ままだ。でもセブは私の淹れる紅茶を嫌な顔一つせずに飲んでくれるし、頭を撫でてくれたりする。本当にお父さんだよね、セブ。 「ああ」 時計の針は八時半を指していた。あと一時間半もすれば寮からの外出が禁じられ、外出が見つかった場合は罰せられる。トイレ掃除一週間(もちろんマグル式)とか、減点とか色々。 「今日は疲れた。私は始めビーターになるつもりなんてなかったのに、みんな乗り気で流されちゃったよ」 まあ、やると決めたからにはしますがね、押し流された気持ちが拭えないのですよ。 「そうだったのか? 周りが騒いでいるし、お前も何も言わなかったから当然やる気があるのだと思っていたが」 セブが紅茶から顔を上げた。実はソレ、水出しなんですよセブ。水出ししたのを温めたんです。お味はいかが? 「美味くなったな、レイノ。練習したのか?」 セブが紅茶のカップをクイと持ち上げる。 ――良かったようです。そしてやっぱり私は下手だったようです。 「ううん。コレ、水出し」 「水出し?」 「お湯じゃなくて、お水でゆっくり淹れたんだよ」 だから失敗しませんでした。お湯だと確実に失敗することが判明したな。 「ふむ、悪くない。今度から水出しにしてくれ。――今からでも遅くはない。止めたければ止めても良いんだから、そうなら言え」 セブは初めて不味くない私の紅茶に満足したみたいで、いつもより顔が緩んでる。お父さんは娘に甘いねぇ。 「やるよ、私。ドラコたちも期待してるみたいだし、私もやる気でたし。見てて、私の前に敵なしと思い知らせてやるから」 後半は冗談と思ったんだろう、セブは期待している、と笑いながら言った。まあ、初めて箒で飛んだばかりの子供が、数いる先輩たちを滅多打ちにできるとは考えられないよね。私がセブの立場だとしても信じられないだろうしね。 父親と過ごす一時間は短いと思う。今までが今までなだけに、私は後ろ髪引かれる思いで寮に戻った。 真夜中少し前に、寮の出入り扉に来てくれるように頼んで。 |