「ポッターは間違いなく退学さ! マクゴナガル教授のあの剣幕を見たかい?」


 ドラコがそう言って哄笑してるから、肩をポンポン、と叩いた。


「ああレイノ、どうしたんだ?」

「ジェームズ・ポッターは――ハリーの父親はクィディッチの選手だったんだよ、ドラコ」


 ついでに私の父親でもある。ついで。超ついで。まあその才能を受け継げたからかビーターになったけど。最近の新型の箒ってどのくらい凄いのかね。それだけが気になるわ。


「え?」

「前のトップシーカー・チャーリー・ウィーズリーが抜けてから、グリフィンドールのシーカーは弱体化してる。意味分かる?」


 ドラコは分かったのか、分かったんだろうな、顔をみるみる赤くした。ドラコもけっして飛行が下手なわけじゃない。ただ、ハリーの才能が突出してるだけで。だけどこれは――あんまりな例外すぎるよマクゴナガル教授。上手ければオールオッケー☆、なんてどこのガキの我が侭さ?

 せめて今年は練習だけ参加させて、来年から試合に組み入れる、とかすれば良いのに。


「マルフォイ! 君のせいだぞ、ハリーが……!」


 私たちの会話が聞こえていなかったんだろうな、ロンが真っ赤な顔で怒鳴った。


「君も! スネイプ!」


 何で私が責められてるんだろうか。分からない。

 訳分らん、と顔に出てたからか、ロンは唾を撒き散らす勢いで叩きつけるように言う。




「どうせハリーが退学になれば良いとか考えてるんだろ?!」

「ちょっと、あなた――ロン!」


 言いがかりだ。ハー子が止めてるけど。てか、私はハリーが退学にならないことを知ってるんだよね。たとえ考えたとして、実現する可能性は0%。それにハリーがいなきゃ物語は進まないんだから……いてもらわにゃ困るんだ。


「ちょっと、言いがかりは止めてくれないかしら?」


 何故かパンジーが立ち上がった。男らしいなパンジー、格好良いぜパンジー。でも何でだいパンジー?

 パンジーは私を庇うように立ち、私にはパンジーの背中しか見えない。ヨーロピアンは背が高すぎると思います。

 他のスリザリンの女の子もロンの言葉を否定する。


「そうよ! レイノはあんたたちの寮のウスノロを助けてあげるくらい心が広い子なんだから!」


 褒め過ぎだ。そこまで言われてるのを聞くと背中が痒い。心広くなんてないよと否定したい。でも否定すればするだけ逆効果になると分かるから何も言えない……なんてこった! どうしようもないとは!


「ウィーズリー。間抜けを晒すのもそこまでにしたらどうだい? レイノは――腹が立つことに――お前たちみたいな馬鹿の集まりを気に入ってるようだからね」


 ドラコがロンを鼻で笑った。ドラコの笑い方でアブラカタブラを思い出した。まだ若かったくせして、生え際の後退が早かったアブラカタブラ。ヴォルディーに八つ当たりされたり、私が慰めて背中を叩いたら青筋を立てて私のせいだと唸ったりしてた。なつかしいなー。龍痘で死んだんだろ? 最期に一度会いたかったかも。


「こいつが? まさか!」


 ここまで貶されるともう、呪いたくなってきちゃう☆ クルーシオっちゃうゾ☆



「クルー」

「ロン! あなた、いい加減になさい!! スネイプは何もしてないじゃない!」


 唱える途中でハー子がロンを怒鳴りつけたから、私の呪文は行き場なく霧散した。ちょっと寂しいんだぞ……。






 この後マダム・フーチが帰ってきて、飛行訓練は後味悪く終わった。セブに癒されたいー!


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