パンジー・パーキンソンは気の強そうな顔つきだけど、意外と乙女でヒロイン気質があると思う。ドラコとの恋物語を紡ぎたい――という言葉を聞いた時にはなんて乙女なんだと目を剥いた。
















 午後三時半、校庭の端、禁じられた森のそばにスリザリン生は揃っていた。私の左隣にゴイル、ドラコ、パンジー、クラッブ、右にはアメリアがいる。ドラコは自信満々そうに、パンジーは別段緊張した様子もなく。アメリアを見ればしゃがんで土遊びをしていた。アメリアさんやめておしまいなさい……。




 飛行訓練ねぇ。前はビーターしたけど、二度目の私が選手になったら経験値に差がありすぎる気がする。卒業してからはヴォルディーを目標にブラッジャー打ちまくったしな。闇払いの襲撃かと思ったじゃないかと責められたことは――何回あるんだろう? 数えてないから分らんな。


「なにをボヤボヤしてるんですか」


 グリフィンドール生がまだ並んでいないのを見て、マダム・フーチが声を鋭くした。初めての授業だから勝手がわからなくても仕方無いと思うよマダム。


「みんな箒のそばに立って。さあ、早く」


 ガミガミ声に面食らいながらハリーたちは並んだ。スリザリンはそれを見下して鼻で笑っている。


「右手を箒の前に突き出して。そして、『上がれ!』と言う」


 上がれ、という前に箒は飛び込んできた。よしよし良い子ねー……見覚えがあると思ったらコレ、昔私が苛めて――ゲフンゲフン、可愛がっていた箒ちゃんだわ。ペコちゃんマークの彫りがある。


「ドラコ、握り方間違ってるから直しておいた方が良いよ」

「え?」


 アメリアの箒がヨーヨーみたいに地面と手の間を往復しているのを横目にドラコに注意を促した。アメリアは楽しそうだ。





「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、二メートルくらい浮上して、それから少し前かがみになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ――一、二の――」


 三、とマダム・フーチが言う前に、ネビルが空を駈けた。前衛的な飛び方だ。曲芸にしたら金が儲かるかもしれない。


「こら、戻ってきなさい!」


 戻ってこれるだけの技術もないのに、無理だろ。私は仕方なく箒を強く握った。浮遊呪文だと対象をちゃんと杖先で捉えなきゃいけないし、規則性なく揺られているネビルを追うのは難しいから仕方無い。

 原作では手首の骨の骨折だけという強靭さを見せてくれたネビルだけど、ナマで箒の暴走を見ているとそれだけで済むはずがないように思えてくる。


「Miss.スネイプ?! 帰ってきなさい!」


 飛行術の先生なら自分で助けに行けよ、と思わないでもない。それともマダム・フーチには今地上から離れられない事情でもあるのかいな。

 遂に柄から手を放しちゃって落ちかけたネビルの手首を掴んだ。だてに二十年近くバット握ってないからね、両手を離して飛ぶのは得意だよ。

 ゆっくり降ろしてあげたのに、ネビルは足首を捻った。マダム・フーチが医務室にネビルを連れていくと言い、スリザリンから歓声が上がった。


「凄いわね、レイノ。両手離して飛ぶなんて」

「ヒーローみたいだったわ!」


 私を囲んだのは女子で――男子は輪の外にはじき出されてしょんぼりしている。デコリーンごめん! でもストレスでそのデコが後退するっていうならバッチ来い☆


「でも足挫いちゃったみたいだしさ。ちょっと悪かったかも」



 
落とし方が。




「そんなことないわよ、あのデブのウスノロが死ななかったのはレイノのおかげなんだから」


 私が何もしなくてもネビルは生きてたよ。死亡確実じゃないよ……。「禁じられた森殺人事件〜生徒たちはみた! 犯人はまさかの箒〜」じゃないんだから。


「そうさ! あいつの顔を見たか? あの大まぬけの」


 女子の言葉にドラコが復活した。



「やめてよマルフォイ」


 止めたのはパーバティだな。


「へー、ロングボトムの肩を持つの? パーバティったら、まさかあなたが、チビデブの泣き虫小僧に気があるなんて知らなかったわ」


 この年頃の子はみんな色恋話が好きだなぁ。恋に恋してるからよね☆……。自分で言っておいて何だけど、ウザっ!!


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