1 ――飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンの合同です―― 寮内に貼り出された掲示を読み、マルフォイが呻いた。額を押さえながらだと禿げが進行したのかと思っちゃうよ。 「よりにもよって……グリフィンドールなんかと!」 飛行訓練がもうすぐ始まると先輩から教えてもらってたからだろうけど、最近のドラコはウザかった。ここ数日中ずっと、マグルのヘリを危うくかわしたのさ、と鼻高く自慢しているドラコ。あやうくかわさにゃならんほど危険に足を突っ込んだって意味と違わないと思うんだが。 ドラコは下手な演技してるみたいに悲しんでいる。本当に悲しいんだかどうだか。 ワシミミズクが籐の籠を運んでくる。朝食時のお手紙タイムだ。 「あ、母上からだ。ほら――レイノ」 朝食はまださっぱりしたものが多いからマシだけど、昼食と夕食は脂っこすぎて食えない。だから朝に食いだめして、昼と夜は花の蜜を吸うてふてふになるんだよ。前もこれをやったからヴォルディーに無理やり肉を突っ込まれたことがある。罵りまくって牛の胃の呪いをかけてやったが。 「おお、素晴らしいよナルシッサさん。これのおかげで私生きていける……!」 ドラコが肉を食えない(食わないとも言う)私のことを手紙に書いたらしく、毎朝シシーから味付けも油脂も控えめな軽食が届いている。ドラコのワシミミズクは大忙しだ。荷物増やしてご免ネ☆ 私はランチボックスを掲げてナルシッサ大明神に祈りを捧げた。今度買い物に付き合いますので。 「大げさだな」 「大げさなもんか。生きるか死ぬかの瀬戸際だぞ!」 ついでに、ヴォルディーからは学生時代、「日に日にやつれて行ってるから、とりあえず何か食べて!」と怒られたことが――――何回も、ある。仕方ないよ、食えないんだモン。 「レイノはお肉アレルギーなの?」 アメリアがパンにたぷりバターを塗りつけながら聞いてきた。ちょっと塗りすぎじゃありませんか、アメリアさん。 「アメリアさん」って、何だか「ドドリアさん」に似てるな。やっておしまいなさい、アメリアさん!……これを言ったら友情が壊れる気がするから言うまい。 「嫌いじゃないし、食べられるんだけどねぇ。私の舌は薄味がお好みなんですよ」 「えー? これ、そんなに濃い味付けかしら?」 そうなんだよ! 日本人には濃いんだよ! ブルストを出せ、ブルスト、ブルスト! ドイツ料理のあの淡白さが羨ましい! 「私には無理なのさ……」 「何が? 真っ白な灰みたいになっちゃって」 黄昏る私に首を傾げ、アメリアはパンを千切って口に放り込んだ。 |