ハグリッドの木の小屋でロックケーキを食べるのを諦めながら、ハリーはローブをよだれだらけにするファングの頭を撫でていた。


「気にするな。スネイプは生徒という生徒はみーんな嫌いなんだ」


 スネイプの初授業について愚痴をこぼせば、ハグリッドは仕方無いと肩を竦めた。


「でも僕のこと本当に憎んでいるみたい」

「ばかな。何で憎まなきゃらなん?」


 わざとではないのだろうがハグリッドはハリーと目を合わせなかった。ロンがハリーの言葉を補てんするように文句を言う。




「それに、あのスネイプの娘! 贔屓されてるに決まってるよ! あんなに早くおでき薬ができるもんか!」


 僕なんて授業時間ギリギリまで出来なかった、とロンは憤まんやる方ない様子で、レイノの薬のあまりに早すぎる完成を疑っている。


「レイノが? スネイプ先生に贔屓されちょるだって? そんなことあるわきゃねえ、だってレイノはハリーの――」


 ハグリッドはハリーの顔を見た瞬間、唇をへの字にした。


「いかんいかん、これは言っちゃならねえんだった」

「僕の、何なの? ハグリッド!」

「聞かんでくれ。これはダンブルドア先生にも止められとるんだ」


 身を乗り出して訊ねるハリーの顔の前で手を振って、ハグリッドは話題を変えた。





「チャーリー兄貴はどうしてる? 俺は奴さんが気に入っとった――動物にかけてはすごかった」


 ハリーの質問は取り下げられ、疑問がハリーの胸に渦巻いた。レイノが、何? 僕の何なの?

 少なくともハリーの関係者だというのは分かったが、詳しいこと――一番聞きたいことは聞けなかった。ロンは兄自慢の話に花を咲かせ、ハグリッドもそれにウンウンと頷いている。










 ティーポットカバーの下に紙切れを見つけ、ロンの話は聞き流してその紙に書かれた記事を読んだ。「グリンゴッツ侵入さる」。


「ハグリッド! グリンゴッツ侵入があったのは僕の誕生日だ! 僕たちがあそこにいる間に起きたのかもしれないよ!」


 ある意味魅力的ともいえる内容にハリーは声を上げた。ハグリッドが目を逸らす。ロックケーキを勧められたがこれが食べられるほどハリーたちの歯は強靭ではないので無視する。


「荒らされた金庫は、実は侵入されたその日に、すでに空になっていた」


 七百十三番金庫を思い出し、ハリーの頭ではぐるぐると想像が巡った。小さな包みしか入っていなかったあの金庫は、ちょうど七月三十一日に空になったのだ!



 これ以上いたら夕食に遅れると言われ、ハリーとロンは木の小屋を追い出された。来てくれた礼だとロックケーキを押し付けられ、二人のポケットは重い。それはまるでハリーの悩みのようで、スネイプのこと、レイノのこと、七百十三番金庫のこと――この三つが彼の歩みを遅くした。その日の夕食の味は良く分からなかった。


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