1 スリザリン生はほぼ純血の家系出身者だ。どこの家もみんな入学前の勉強をさせていて、レイブンクローを別にすれば他の寮に比べ生徒全体のレベルが高い。 「レイノ! 今日は記念すべきことに、我らが寮監の初授業だ!」 金曜の朝。ドラコがあんまりにもったいぶった言い回しをしてくるから、初め何を言いたがってるのか分らんかった。 「うん、そうだね」 「――? 君は嬉しくないのかい、父親の授業だぞ?」 私の横でライ麦パンを食べているアメリアが、そういえばレイノはスネイプ先生の娘だったわね、と言ったのにドラコが脱力した。私はもう慣れたぞ。アメリアは天然で忘れっぽい。本当に何でスリザリンに来たんだか。 「そりゃあ嬉しいけど、たとえば私が質問に完璧に答えられたとするよ? そしたら事前に質問の内容と答えを教えてもらってたんじゃないかって疑われるんだよ。だから面倒だな、としか思えないんだよね。なお悪いことにグリフィンドールとの合同だしさ」 特にロンあたりは、「贔屓だ! 娘だからって!」とか言うに決まってる。馬鹿か、セブのことだから身内には点が辛くなるに決まってるっつーの。 「ああ、なるほど。まあ大丈夫さ。僕も父上からスネイプ先生は公平な方だと聞いているし、スリザリンには君を疑うような馬鹿などいないさ」 スリザリンでは「公平な人」なんだなー。グリフィンドールじゃあ贔屓してるって悪評立ってるみたいだけど、ところ違えばってことかね。 「そうなら良いんだけど。ま、授業は楽しみだよ? セブも休暇にしか家に帰ってこれないから、ちゃんと教えを受けるのは初めてだし」 スラグホーンの授業は――まあ、役に立ったと思うよ? ほっほう、ほっほうばっかり言いやがってうざかったけど。 「そうなのか? 僕はてっきり先生が教えているものだと思ってたんだが」 「参考書はくれたけど直接教えてもらってはないね。誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントはだいたい参考書だったよ」 「それは――そうか」 信じられない、といった顔を一瞬して、ドラコは頭を振った。まあ、普通の子供なら泣きながら放り捨てるだろうな、そんなプレゼント。アメリアが凄いわね、とニコニコした。 「でも一番うれしかったのはアレだな、『困った! に役立つ呪文集』。あれは一番役に立った」 ヴォルディーにも使ったしね。反抗期の鍋に上下関係を分らせる魔法。凄く悔しがってたのを覚えてる。僕は人間なのにっ! って人権を訴えてたな。 「そんな本があるのか」 「私それ知ってるわ。ママが愛読してるもの」 うっとりと笑む私にちょっと引いた様子でドラコは後じさる。そんなに怖かったかしらん。 「ま、まあ、授業が楽しみだな」 ドラコは話を逸らした。若いなあ、はっはっは! ついでにその後、アメリアのお母さんとは話が合いそうなので、紹介してくれるように頼んでおいた。 |