2 夕食は肉かポテト、そして野菜。昼間に食った卵サンドが懐かしく感じられるわ。なるべく油脂の少ない、茹で野菜とかを選んで食べる。懐かしい味といえば懐かしい味だけど、また七年間食べ続けるのかと思うと憂鬱になる。味が濃いせいで胸焼けがする。 「どうしたんだい、レイノ? 全然肉を取っていないじゃないか」 「いや、食欲がなくて……」 無いというよか、失せた。私はこれから七年間、野菜だけを食べて生きていきます。ドラコの皿には肉がこんもりとのっていた。真似できんわー……。そういやヴォルディーも平気で食ってたな。外人の胃袋はどうなっとるんだ? 「それは駄目だ。少しは食べないと元気が出ないぞ、ホラ」 そう言ってドラコは私の取り皿に肉を数切れ乗せた。ドラコォォォォォォ!? なんてことを――苛めか、新手の苛めか?! いや、親切だって分かってるよ? でも食えないもんは食えないんだよ! 「あー、有難う、ドラコ」 「どういたしまして」 昼の卵サンドに増して私はもそもそと夕食を摂った。ドラコが親身になって心配してくれるもんだから、お前のせいだとは言えなかった。ついでにクラッブやゴイルは視界から削除している。あいつらを見たらリバースしちゃいそうだ。 寮に引っ込めば、割り当てられたのは四人部屋だった。だけど人数が四の倍数でなかったからだろう、私ともう一人だけで占領することとなった。ベットは二台しかなかったから、多い分は移動させたんだろうな。広くてよろしい。 「私アメリア。アメリア・ビキンスよ、よろしく」 同室になった少女はちょっと垂れ目なことを除けば平凡な顔立ちだった。エスカルゴと呼ばれる髪型をしていて(頭の両サイドで髪を纏める。それがカタツムリの巻っぽい)、上品そうな子だ。いかにも箱入り娘的な。 「私はレイノ・スネイプ。レイノって呼んでね」 アメリアはなんというか、髪型だけじゃなくてカタツムリっぽかった。どうしてスリザリンに来たんだかさっぱりだ。 「ねえ。組み分けの時、みんな貴女に注目してたわ。どうしてなの?」 二人で共有できる小物を見せ合っていると、アメリアが思い出したように聞いてきた。ああ、そりゃ名前だよ名前…… 「スリザリンの寮監の娘なんだよ、私。あの教授に娘なんかいたんだ?! ってことだよ」 「へえー。寮監って、どの先生かしら?」 「黒髪に、鉤鼻の……いかにも陰険そうな顔した大きいカラスみたいな人」 「ああ、あれね」 アメリアは納得して「似てないわね」と頷いた。養子だからといえば何度も頷いていた。……血は繋がらないけど家族だし、似てる所があると言って欲しかったんだが。まあ、まだ顔合わせて一時間足らずだし、無理か。 二十年会えなかったわけだし、明日はセブの背中にひっつく所存であります、軍曹殿! 向こうからすればいきなり何をするんだって話だろうが。 次の日各所でいつになく珍しい光景――かのセブルス・スネイプが童女を背負っている(詳しく言えば、童女が貼り付いていたのだが)光景が見られ、魔法薬学教授の株が微妙に上がったとか下がったとか。 |