「あのね、スキャバーズのひげの端っこのほうが少し黄色っぽくなってきたみたい」


 話題を変えようとハリーが言い、どうでもよさげに黄昏れている(ポーズをした)私を誘わず話し込み始めた。


「ほんとかい? このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話でもちきりなんだけど。それじゃ、君なのか?」


 突然コンパートメントの扉が開き、青白いデコリーンジュニア、じゃなかった、ドラコが入ってきた。そういえばこの荷物の買物の時に会ったんだよね、記憶あやふやだけど。


「そうだよ」


 クラッブとゴイルは――ひげ面じゃなかった。安心だ。十一歳のくせして青髭なんかになられた日にゃ世を捨てて隠居するよ。


「ああ、こっいつはクラッブで、こっちがゴイルさ」


 左右を示しながらドラちゃんは言った。ドラちゃんってぇと、某どら焼き大好きロボットを思い出すなー。助けてドラ○もぅん! って泣きつけばいつでも何でもパパッと解決してくれるんだ。それをここのドラちゃんに求めても無理だろうけど。


「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」


 咳ばらいしたロンを見つけた目はそのまま私を捉えて、おや、という顔をした。


「久しぶりだな、レイノ。母上がまた会いたいと仰っていた」

「久しぶり、ドラコ。それは……遠慮したいな。服に埋もれて死ぬかと思った」


 あの買物の最中に私たちは名前呼びするようになった。他人行儀だし、三人もマルフォイがいたらどれが誰だか。そういえばアブラカタブラどうしただろう。ヴォルディーに八つ当たりされてるかもしれんな。

 ドラコはクスリと笑うと私から顔を上げてロンを見やり、高慢に言った。


「僕の名前が変だとでも言うのかい? 君が誰だか聞く必要もないね。パパが言ってたよ。ウィーズリ家はみんな赤毛で、そばかすで、育てきれないほどたくさん子供がいるってね」


 ドラちゃん、呼び方を父上かパパに統一なさいな。


「ポッター君、そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう」

「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま」


 差し出されたドラコの手に応じず、ハリーは言った。でもよハリー? 私としてはロンはお勧めできないぞ? デコがこういう言い方をしたのもロンの咳ばらいにムカついたからって理由もあると思うんだ。デコは繊細だからさ! 飴細工のデコリーン、ガラスでできたデコリーン、ああ、鑑賞用として一家に一個欲しいなふひゃひゃひゃひゃ!


「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるがね。もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道をたどることになるぞ。君の両親も、何が自分の身のためになるかを知らなかったようだ。ウィーズリーやハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」


 嫌味な言い方だなー、でもそれがデコリーンだから。ムカつく所か愛おしいね。きゃあ頑張って、ドラコ! デコ広げて!


「もういっぺん言ってみろ」

「へえ、僕たちとやるつもりかい?」


 臨戦態勢な五人にため息が漏れる。みんな血の気が多いこった。ゴイルがスキャバーズ振り回したら、通路側に座る私には逃げ場がないし被害がでる。殴られたらついクルーシオっちゃうかもしれないじゃないか。アバダじゃないだけマシだと思え。


「ドラコ、ハリー、ロン。喧嘩するなら外でして。迷惑だから」

「君もマルフォイの味方か?!」


 このガキが……。ロンの頭は単純すぎるのか? 単純なんだろうな。私は双方にウザいっつったんだ。


「私は私の味方。ここで喧嘩なんてされると私に被害がくる。OK?」


 そう言って三人を追い出し、ついでに二人も追い出してローブに着替えた。

 あれ? 私、ロンの第一印象最悪じゃね? まあ私も深く付き合いたいとは思わないけど。


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