「誰かヒキガエルを見なかった? ネビルのがいなくなったの」


 偉そうだ。ちょっとお高くとまった感じが拭えない。ふわふわの茶色い髪を波打たせて、ハーマイオニーの登場だ!……ハー子ちゃんや、ネビルと言われても、私らには分らないよ。

 だいたいの想像はつくけどそれは想像に過ぎない。ネビルもハーマイオニーの後ろに隠れてないで出てきなさい。子リスみたいで可愛いけど。


「見なかったって、さっきそう言ったよ」

「あら、魔法をかけるの? それは、見せてもらうわ」


 ……相互理解をしようとさえしないな。これが七年後には僕たち・私たち結婚します! になるんだから、不思議な世の中だ。そういえばヴォルディーもアレだったな。私の秘密を握った(と思って)ほくそ笑んでたな、最初は。

 私もあいつが猫かぶりだと知ってたからどんぐりの背くらべな戦いだった。良いライバルだった……どこぞのゲームみたく殴り愛的な関係だった。挨拶代わりに魔法飛ばしたし、時々死の呪文混じってたし、学年末には成績を競った。総合ではだいたい私が勝ったが、闇の魔術に対する防衛術と呪文学は負けたんだった。いや、あいつの点数がおかしかったんだ。何で百点満点の科目で二百三十点取れるんだ。私も人のこと言えないけど。


「お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ」


 スキャバーズには何の変化も訪れなかった。まあ当然だわな、そんな呪文があってたまるもんか。


「その呪文、間違ってないの?」


 間違ってるんだよ、と思いつつも言わない。どうせ双子が弟の間抜けな姿を見たくて嘘八百教えたんだろうし、それを指摘してやるほど私は優しくない。


「まあ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試したことがあるけど、みんなうまくいったわ。私の家族には魔法使いは誰もいないの。だから、手紙をもらった時、驚いたわ。でももちろんうれしかったわ。だって、最高の魔法学校だって聞いているもの……教科書はもちろん、全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

「レイノ・スネイプ。教科書を暗記して、なおかつ成功してるんだったら成績は悪くはならないと思うよ。みんな暗記までしないから」


 私の言葉にハリーとロンは安心したようにため息を吐いた。顔を見合せて肩を竦めあっている。


「僕、ロン・ウィーズリー」

「ハリー・ポッター」


ついでにネビルの自己紹介は飛ばされた。可哀想に!

 ハー子のマシンガントークに二人が気おされている中、私はこそっとネビルに自己紹介した。


「私はレイノ・スネイプ。よろしく」

「あ……ぼぼぼ、僕はネビル・ロングボトムっ。よろしくっ」


 君、どもりすぎだよ。でもそんなネビルも好きさー! 木の陰に隠れてぷりゅぷりゅしてるウサギみたい! 可愛い可愛い、撫でくりまわしてボールにしたいくらい可愛い。


「カエルはそのうち見つかるだろうからそんなに泣くんじゃないよ。男の子でしょ」


 そう言えばネビルはキョトンとした顔をする。一体どうした、私何かした!?


「どうしたの?」

「ううん。……レイノって僕のお祖母ちゃんみたいだ」

「乙女に対して失礼だよネビル……」

 
 傷ついた! 本気で傷ついた! そりゃあ転生前とヴォルディーと遊んだ期間を考えれば君くらいの孫がいてもおかしくはないさ、でもね、私は今十一歳! 花も恥じらう乙女なんだよ! え? 何? それは十代半ばじゃないかって? 気にするな!


「ご、ごめん」

「いや、別に良いよ」


 まだ話していたかったのだけど、ハー子がネビルを連れ去ってしまった。ああ、マイ・スウィート・ラビット、ネビル! ジュリエットって叫びそうになった。ネビルには是非ロミオって呼んで欲しいな。


「へぼ呪文め……ジョージから習ったんだ。ダメ呪文だってあいつは知ってたのに違いない」


 知ってるからこそ教えたんだろう。


「君のお兄さんたちってどこの寮なの?」

「グリフィンドール。……パパもママもそうだった。もし僕がそうじゃなかったら、なんて言われるか。レイブンクローだったらそれほど悪くもないかもしれないけど、スリザリンなんかに入れられたら、それこそ最悪だ」


 ロンの頭でレイブンクローは先ず無理だよね。スリザリンでやって行けるほどの器量もないし、ハッフルパフに行くほどおとなしやかな性格もしていない。グリフィンドール確実だろうが。……あれ? グリフィンドールって残り物の掃き溜め?


「そこってヴォル……つまり、『例のあの人』がいたところ?」

「あぁ」


 私の父親がスリザリンの寮監だって双子の話から聞いているだろうに。忘れてるのか? そこまで言われるとムカつくぞ。


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