「お帰り」

「ただいま」


 シシーことナルシッサに見繕われた大量の衣類を先に家に送って、疲労困憊で帰宅すれば台所にエプロン姿のセブがいた。シシーとの買い物にかなり時間がかかりそうだと分かった時点でセブには先に帰ってくれるように梟を飛ばしたから、予定が狂って一人での帰宅――で本当に良かった!

 YES! We can! 一気に元気が出た。セブってば新妻みたいだよぐへへ、萌える!


「どうしたの、セブ。珍しい」


 珍しいというより、初めてではないですか? 萌えですか、萌えですね。ヒッヒッフーヒッヒッフー、落ち着け自分、ラマーズラマーズ!


「今日はお前の誕生日だろう」

「うん、そうだけど――覚えてたんだ。何にも言わないから忘れられてるんだと」

「そんな訳があるか。驚かそうと黙っていただけだ」


 萌えボタンはどこだ。へぇボタンはいらん。萌え萌えずっきゅんなセブに77萌えを捧げるぞ☆ ラッキーセブンですよおめでとうございます。はっはっはっは!


「上着を部屋に置いて、手を洗って来い」


 その間に出来るからな、と言ったセブの手にはミトン。ミトン! ミトン……!

 私は鼻血を出さないうちに部屋に走り、夏場だし薄い上着をベットに放り投げて洗面所に急いだ。主夫なセブ良いよ、研究室で怪しげな薬合成してるいつものセブもそりゃあ素敵だけど、ギャップ萌えって言うの? 喀血しちゃいそうだようへへへへ。


「ケーキは店屋物だが、料理は私の手作りだ。久しぶりに作ったから腕が鈍っているかと思ったが……そんなことはないようだな」


 薬の調合と料理って似てるしね。調味料はさしすせそ、とか。


「わあい、セブの手料理だ! 手料理手料理!」


 萌えのツボをばっちり心得てるセブに乾杯!








 その日の夕食は「不味い、でも美味い!」と叫ぶ少女と「どっちなんだはっきりしろ!」と怒鳴るセブルスの二人だけで、ささやかに行われたのだった。


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