10


 授業が始まって、私は教科書に書かれた内容に首を傾げた。小学生レベルだって言って尺太郎お義父さんに詰め込まれた内容が、教科書の半分を占めてるんだけど。これは――あれか。成績トップになれと。






「うう、眠い……」


 前川さんともう一人、勉強より化粧に興味がありそうな子と三人で一室になった。去年までは五人部屋だったらしいけど、中等部に上がるから三人部屋になったんだとか。


「おはよう、陽菜ちゃん」

「おはよう、鈴緒ちゃん」


 私は特に陽菜ちゃんこと前川さんと仲良くなった。私は帰国子女だってこと以外は普通だし、自然に溶け込んでった。三段ベッドの真ん中で目をごしごし擦る陽菜ちゃんを起こして、とっくに起きてブラッシングしてるもう一人のルームメイトこと片平さんと三人で食堂へ向かう。日本に来て良かったことって、朝ご飯がご飯味噌汁納豆魚野菜ってところかな。昆布だしよ有難う、私日本に生れて良かった! 今生はイギリスだけど。


「今日の試験、憂鬱だわ……。五月病を発症しましたって言って休みたいくらい」

「五月病で病欠は無理だと思うよ。せめて原因不明の貧血、それに伴う立ちくらみ、頭痛とあ言わなきゃ」

「それ、良いわね。さっそくしましょ」

「あなた達、何サボりの算段立ててるの」


 欠伸をする陽菜ちゃんがあんまりにだるそうだったからそう言えば、片平さんにギロリと睨まれた。


「だって辛いんだもの」

「私、サボるだなんて言ってないよ」


 片平さんに怒られながら食堂に着いて、決まった席に着く。尺太郎お義父さんが上座で暇そうに肘を突いてた。麦山副塾長に行儀が悪いと怒られてるけど馬耳東風で耳掃除を始めた。麦山先生可哀想。

 ムギムギが出欠をとって、副塾長に報告して中等部生が全員揃ってることを確認した。ここは小等部と中等部で食堂を分けてるんだとか。


「頂きます」


 麦山先生に小突かれて尺太郎お義父さんは手を合わせ、私たちもそれに倣った。ここにきてから料理とはとんと縁がないけど、今度休みの日にでも何か作りたいなぁ。ああ、セブはちゃんと食べてるだろーか。私が教えたから、いきなり一人暮らしになっても困らないくらいにはセブも料理できるし、家事に関しては手伝ってもらってたしセブも覚えてるだろーな。ああ、セブに会いたいな、セブに。でも駄目だ、私セブに嫌われたっぽいし。誕生日を二人で祝ったばっかりだったのになぁ、グスン。


「ああ、先生っ……私、貧血みたいです、立ちくらみが……っ」


 横で陽菜ちゃんがわざとらしくクラッとか言ってるのを見て、冗談のつもりだったんだけどなぁとご飯を口に放り込んだ。片平さんが陽菜ちゃんにチョップして黙らせてた。


[] | []

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -