レイと一緒に料理をしたことがあるし、掃除洗濯だって慣れてる。働きに出てるレイ――どうやってたのか、レイは僕が知らないと思ってたみたいだけど、二人に分裂したりしてた――のために食事以外の家事はずっと僕も手伝ってきたから。だけど前のようにそれに集中できない。だって、レイがいないんだ……。


「僕の姉さんは凄いんだ。僕らと同い年なのに魔法にとても詳しいし、頭も良いんだ」


 公園の端のベンチに座り、最近親しくなったリリー・エバンスという少女に説明した。健康的な、肌も輝く女の子――レイがいない今の僕の、隙間を埋めてくれる子。リリーが魔法族だったらもっと良かったのに、どうしてリリーはマグルなんだろう?


「そんな凄いお姉さん、どうしていなくなっちゃったの?」


 リリーも感覚的に魔法に慣れてるみたいだけど、僕の姉さんの方がもっと凄いんだって自慢したくて言ったレイの話。でもやっぱり、それだけじゃ終わらなかった。聞かないで欲しい、あのことについて訊ねられた。

 なんて説明すれば良いんだろう。僕が、レイを否定した? レイにどっか行っちゃえって言った? 嫌だ、言いたくない。でも。


「僕が、レイなんていらないって言っちゃったから」

「レイ?」

「姉さんの名前だよ」


 僕はレイの荷物になりたくなかった。レイは僕のことを第一に考えてくれてたのに、僕はそれを知ってたのに、レイのしてくれてたことを否定した。いらないって言っちゃったんだ。


「ふぅん」


 リリーはどうでも良さそうに鼻を鳴らし、良く分かんない、と呟いた。




 リリーと話してると、リリーに魔法界の話を聞かせてると、レイのことをしばらく忘れられた。でも、一人になれば、一人になって、父さんと母さんの喧嘩を聞いてると、思い出す。ううん、レイを感じるんだ。頭を撫でて、心配なんていらないよって、笑ってくれるレイの顔が浮かぶんだ……。


「レイ、ごめん……帰って来て」


 ベッドの上で丸くなって、レイのことを考える。早く十一歳になりたい――僕と双子だから、レイも一緒にホグワーツに入学するはずだから。見つけたら、謝って、また一緒に過ごすんだ。二人で。






 二年後、ホグワーツの入学式。僕は膝の力が抜けるかと思った。そこにレイの姿は――なかった。


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