新学期までは二カ月とちょっとあった。基本的なことは西洋魔法と共通してたし三年生までの内容は二週間ほどで終えたけど、それ以上の内容となるとそのスピードを維持するのは無理で、六年までの内容を終えるのにひと月かかった。感覚としたら中一レベルの授業を中三で受けてるような感じで、基本を教えてもらえたらだいたい分かる、みたいな。

 今はこれまでの復習と体捌きを集中してやってて、短期間に詰め込んだものを定着させるために問題を解いたり魔術を使ったり、……馬上居をしたり日舞を教えてもらったり。







 今思えばこの時私は焦っていた。こんなにセブと離れてたことなんてなかったし、少しホームシックになってたのかもしれない。早く、セブを守れるくらいに強くなりたかった――その焦りが、失敗を呼んだのだ。








 私が花園先生の暮らす離れで学んでいる間に春休みが来て、あと二日でその休みも終わろうとしていた。私は中等部に入学することが決まっていた。日本人から見て『老け顔』な白人の私は十二歳と言っても違和感がないそうだ。良かったと喜ぶべきか悲しむべきか……。

 庭で、目を閉じ瞑想する。私という『個』が巨大な『一』に溶けるイメージだ。――今私が勉強してるのは自然の気を利用し自分の中で増幅させるある種カウンター的な魔術で、自分の中にある魔力を消費する西洋魔法とは少し異なる。使用目的も違ってくるし、作用も違う。たとえば「浄化」でいうなら、西洋魔法は邪を力で押しつぶすのに対し、東洋魔術というか日本の魔術は邪の中の聖を増幅させて性質を変化させるといった感じだ。

 足元から地面に溶けていくような感覚に身を任せる。体内と体外をひっくり返すつもりで魔力を込めた。上手くいかず、焦る。もっと、もっと、と力みすぎて、魔力と気の摩擦にまで気が回ってなかった……。


「いかん、スネイプ!」


 花園先生が叫んだ時には発火していた。魔力を燃料とする炎は青白くて、先生の魔術も焼け石に水――炎は一瞬で肥大化する。

 眼底まで焦がす熱に悲鳴を上げようとして口を開けば火はそこにも潜り込んできて、声さえ焼かれて私は意識を失った。


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