1 セブに嫌われたー。私、どうすりゃ良いんだ? 行く当てもなし、本当にどうすんべ……。 日本に行こうと思い立った時は、私は私を褒めたくなった。 変化の術ってのはあんまり体力使わないし恒久的なもんだからかけっぱなしでも問題ない。あの後職場にリターンして辞表を出してからずっと大きいままでいてる。ちびっこがうろついてたら危険だもんね、日本とは言えこの時代は大学で学生運動が興ってる頃だ。危険地域であることに間違いはないだろーな。 「日本に魔法学校ってあるのかねぇ」 魔力の強い地域を探して徘徊してみる。関西の田舎に複数の魔力を感じて行く。とある川に魔力が染み込んでて、上流に魔法使いたちのコミュニティー……って駄目だ、思考が英語ナイズされてる。魔法使いの一族とかがいる可能性が高い。上流に向かって歩く。セブと一緒に駆け回ってたおかげで脚力は十分あるから良かったものの、転生前の私だったら確実にへばってただろうなぁ。 ザックザックと進めば、川沿いに生える木の種類が変わってきた。この薄いピンクがかった花の木は――桃だ。季節はずれの桃が咲き誇っている――しだれ桃だ。幻想的で、実際あり得るはずがない光景に足が止まる。 しばらく呆然と突っ立って、目的を思い出した。そうだよ、魔法使いたちの村だか屋敷だかを探しに来たんだった。魔力を探れば、この光景の理由が分かった。魔法で木の時間を永久的に三月下旬にしてるのだ。この時期じゃあまだ蕾のはずだもんね。 桃の通り抜けを過ぎるとだんだんと川幅が狭くなった。ゴツゴツした岩肌が目立ち、切り立った崖に囲まれる。人が一人か二人ようやっとくぐれる隙間を抜け、急に開けた視界に目を細めた。目の前には大きな屋敷。それも、複数の魔力を感じる。十や二十じゃない、百単位の魔法使いがここにいるようだ。 「おや、珍しいお客さんですな」 松が倒れたように囲む門から、和鋏を手にした老人が顔を出した。気付けば私は元の姿――レイノ・スネイプとしての姿に縮んでいる。 「ようこそ小さな外国のお客さん。ここは桜花魔術屋敷という」 内側から門が開かれた。老人が手招きする。 「今、来年度の入学生を募集中なのじゃよ」 |