才能のある者には門戸を開く。たとえそれが、何者であれ。

 それがホグワーツであり、三大魔法学校といわれる所以なんだろう。でも、それなら学費をもうすこし安くしてくれませんか。


「ジャックはこの書類ね。スペルチェックお願い」


 いま私は中間管理職です。一番辛い位置なんだよね、中間管理職。上からの重圧、下からの不満、それが全部私に来る。ストレスで血を吐いても良いですかー?


「はい、Miss」


 ジャックはその中でも不満たらたらなくそガキ――じゃなかった、くそ職員で、どうしてこの会社に入ったんだろうかと思えば社長の息子だった。現場を知れと言いたくて下っ端に配属させたんだろうが、息子クンは不平不満でたっぷりだ。はやく社長になって私を辞めさせるのが目標らしい。馬鹿か。


「――これを全部っすか」

「口調には気をつけて。『っすか』じゃなくて『ですか』よ。この量に不満でもあるの?」


 他の職員と比べて少なめにしてある。何故って、手際が悪いから。才能で入った職員が一時間で仕上げるものを二時間かけるからな、この男は。


「いえ、何でもないです」


 顔は不満そのものだ。ジャックの困ったちゃん振りを理解している職員たちから憐憫の目を向けられる。自分で言うのもなんだが私は仕事を上手にこなしてるし、それなりに要領良くできてる。


「マーク、貴方はこれね」

「はい、Miss。大変ですね、レイノさんも」

「分かってくれて嬉しいわ」


 三歳から始めて、今私は九歳になる。六年で、そして女性で部長という大出世、他人に羨ましがられる出世魚だ。でもそれには理由がちゃんとある。勉強は分身して二人体制で毎晩のように貫徹したし、仕事にはそれ以上に打ち込んだ。だからこその今の地位がある。あの甘えん坊ジャック小僧に辞めさせられてなるものか。でもあと二年で休職もしくは退職だよな。理由何にしよう? 寿退社とか言っておけば良いかな? 田舎に引っ込むとか。


「頑張ってくださいね」

「有難うマーク。貴方がいてくれて本当に助かる」

「で、レイノさん。今日夕食を一緒にいかがですか? 俺、美味しい店を知ってるんですけど」


 お礼を言えば、夕食の誘い。ああ、美味しいもの食べたい。きっとフランス料理屋だろうな、イギリス料理は不味いし。イギリスで料理熱が高まるのはまだまだ先だからなぁ……。でも料理熱といっても大雑把な漢料理だからあまり変わらないんだけど。


「うーん、嬉しいけど無理だわ」

「そうですか」


 新しい仕事の書類を渡すため次の職員を呼べば、同僚に囲まれて慰められてるマークがいた。一体どーしたってんだろうか。


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