両親は不仲で子供に構っている心の余裕なんてない。心の余裕もなければついでに食事を用意する余裕もない。私がいなかったらきっと、セブはハリー以上の骨と皮になってしまうだろう。原作でもそんな風に書かれてたし。私とセブが生まれて五年が過ぎていた――セブはまだまだ成長期だ。


「フィッシュ&チップスか……」


 働きに出てる大きな街。油の香ばしい匂いに腹が鳴った。セブに買ってあげたい。でも、セブをここまで連れてくるのは無理だ。買って帰るか? 出来たてが一番美味しいのに?


「美味しいもの食べさせてあげたいな」


 セブの三食は私が保証している。でも、それ以外にお菓子、ジャンクフードとなるとさっぱりだ。金銭的余裕のないスネイプ家だ、私が今のうちから学費を稼がなきゃセブは原作の通り『薄汚れて灰色になったパンツ』を穿かなきゃならなくなる。ああ、勤労学生ならぬ勤労幼児。なんて苦労人なんだ私!


「チュニー! わたし、アレ食べたい!」

「ちょっと待ってってば。引っ張らなくってもお店は逃げないわよ」


 姉妹だろうあまり似てない女の子二人が、フィッシュ&チップスの店に突進していた。チュニー、チュニア、ペチュニア?


「もう、リリーのせいでママとパパからはぐれちゃったじゃない!」

「ごめんなさーい」


 エバンス姉妹だ。姉のペチュニアは面長で首もちと長い。妹のリリーはなるほど、稀に見る美少女だ。


「えへへ、おいしー」


 さっき怒られたばかりというのに、フィッシュ&チップスを姉に買ってもらい一口食べると満面の笑顔になる。うーん、この年齢はこんな感じなのかな? 比べてセブは理性があって物分かりが良い。私の影響かもしれんな。さっさとその場を離れることにした。見ていてつまらなかった。









「セーブー」


 分身の経験と疲労はそのまま私に帰ってくる。本体はセブに連れられ公園を走り回り、分身は会社でずっとデスクワークとなれば、もうこれは疲れるなという方がおかしい。前世もあって頭の悪くない私は女性の中では重宝されていて、高まりつつある女性優遇の風に背中を押されるのもあってかなりの高待遇で働けている。嬉しいことだ。


「疲れた、おんぶ」


 女の子の方が成長が速いとはいえ私らはまだ五歳児。身長差だってほぼないに等しい。背中に抱きついてほっぺたを突きまくった。チーズ星人みたいな勢いで。チチチチチチチチチチチチ! もしくはトマト星人か? トトトトトトトトトトトト!


「止めてよレイ」


 セブはギュッと顔をしかめたけど、それでも可愛い超可愛い。萌える。


「止めないよふっふっふ。今日の晩御飯は何が良いかね?」

「えーっと、じゃあカレー」


 ……にんじんはある。じゃがいもも。セロリだってトマトだってあるさ。でもさ、圧力鍋がないから、にんじんがすぐに柔らかくなってくれないんだよ?


「時間かかるよ?」

「それでも良いよ」


 じっくりことこと煮込んだスープってのは、美味しいに決まってるのだ。


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