僕のお姉ちゃんのレイは、パパやママよりもずっとずっと大人だ。だって大人っていうのは、どっしり構えてて滅多に怒ったり泣いたりしない人のことなんでしょ? だったらレイはすっごく大人だよね。


「ヤクザ者から巻き上げる――恨みを買って刺されるな。バイト――セブを置いて行くなんて私にはできん。却下。さてどうしようか……内職も無理そうだし。ああ、多重影分身ができたら便利なのに。ムン、影分身! とかって――できた」


 レイが何か独り言をブツブツ言ってたから、僕は放っておいた。レイは頭が良いから、僕には分らないことを分かっててすごいんだ。だから邪魔しちゃいけない。絵本を読みながら声を聞いてたら、レイの声が二重になった。どうしたんだろう――って、レイが二人? 僕、お姉ちゃんが二人いたの?


「レイ?」

「ああセブ、気にしないで気にしないで。絵本読んでてね?」


 レイがどうして二人になったのか分らなかったけど、レイがそう言うから絵本に目を戻した。


「じゃあこれだったら変化の術もできるんじゃね? 変化!」


 煙がレイから上がった。でもレイが気にしないでって言ったから気にしない。だってレイだもん。


「おお、成功だ。じゃあ分身ちゃん、あんたが働く方ね、私がセブといるから」

「時々交代とかはなし?」

「あるわけないじゃん。あんたが覚えた仕事を私が学ぶのに、一回術解かなくちゃいけないでしょ?」

「まーねー。まあ、本体がセブのところにいる方が安心だしね。じゃあちょっくら行ってきます」

「いってらっしゃい」


 煙が消えた後には、レイがそのままおっきくなったみたいな女の人がいた。僕はびっくりする。レイすごい! 変身したんだ!


「これで生活費は稼げるな、良し」


 レイが何か呟いてたけど、僕には良く分らなかった。


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