ドキドキ殺人講座


 以下にはある種、心身の健やかな成長に不適当な表現、グロテスクにつながる内容が含まれます。それでも気にならない方のみスクロールしてください。












 日本の教科書は薄い。これは外国に行ってそこの『教科書』を見れば、誰の目にも明らかだ。重い、分厚い、でかい。邪魔な本として三拍子そろってる。こっちの教科書を始めてみてからずっと考えてたことを言ってみた。


「これで殴られたら死ねるね、確実に」


 ハードカバーのそれは殺人的だ。


「そんなの使わなくても人は死ぬよ?」

「ま、ね」


 幼きリドルは純粋そうに目を丸くした。こいつ、世の中は魔法さえ使えればわたっていけるとか思ってんじゃないだろーな。マグルに殺された魔女とか魔法使いを馬鹿にしてるタイプだ。


「リドルンよ、ここで鈴緒ちゃんのドキドキ殺人講座だよ」

「いきなりどうしたのさ。いらないよ、そんなの!」


 ドッキドキにしてやんよ☆


「まあ聞けよ。これは私がリドルンの将来を心配して、善意で行う慈善事業さ。立派な大人になろうね」

「殺人講座がどうして立派な大人になる為に必要なのかさっぱり分からないね」

「まあ黙って俺について来いっ」


 金がないけど心配すんな。そのうち何とかなるだろ。リドルンを引きずって談話室の端に寄った。魔法でホワイトボード出して、マジックのフタをキュポンとあける。


「まだまだ羽ペンが主流だけど、その内魔法界でも鉛筆が一般的になるかもしれないから鉛筆を例にあげよう」


 今の形の鉛筆は、記録に残る限り、ドイツのステッドラーが最初に製造した。1662年のことだからだいぶん昔だ。昔はイギリスで黒鉛が採れたから鉛筆の芯はイギリスの特産品だったけど、今じゃ取りつくしちゃって輸入に頼ってる。それに今じゃヨーロッパの主要鉛筆生産国はドイツだ。


「――リドル君よ、君は鉛筆で人を殺せると思うかね?」

「え、無理なんじゃない? 目をつぶすとかなら分かるけど、殺すだなんて無理だよ。ところでさ、何でこんな話になったの?」

「ところがどっこい、鉛筆で人は殺せるのだ。ん? 何でこんな話になったかって? 私にも分かんない」


 何でだっけ。


「ここ。――この、扁桃腺のあたり。風邪を引いた時腫れたりするここね。ここから上に向かって鉛筆を刺せば、脳に届いて人は殺せる。ナイフや他の鈍器を使うより何倍も証拠の処理がしやすい凶器と言えるかな。芯は言うなれば顔料の塊だし、軸も木製だからね」

「本当に、何でこんな講義が始まったんだか分からないよ……」

「聞けよ」










 それから十数年の時が過ぎ、二人で「ヴォルデモートの淹れた」紅茶を飲んでいた時、彼はフと昔を思い出し言った。


「鈴緒が今の俺様を作った。それは間違いないな」

「何で。どこがよ」

「自覚がないところとか、全く性質が悪い」


 彼女は果たして『ドキドキ殺人講座』を覚えているのやら……覚えていないに違いない。


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